02年9月に小泉訪朝に随行した安倍総理(当時は官房副長官)は、小泉氏と金正日総書記との首脳会談で、
「安易な妥協をするべきではない」
と強硬な姿勢で臨み、多くの支持を集めた。自民党関係者はこう話す。
「もともと、拉致被害者家族と政府は一心同体ではありませんでした。活動を始めた頃に耳を傾けてくれる国会議員は少なく、真剣に拉致問題に取り組むようになったのが安倍さんだったのです」
永田町では「拉致の安倍」とも言われているが、最近では拉致被害者家族や支援者らとの間に、すきま風が吹いているようだ。
4月22日、拉致被害者家族会や支援団体「救う会」が都内で開いた「国民大集会」に出席した安倍総理は、
「南北、そして米朝首脳会談の際に、拉致問題が前進するように私が司令塔となって全力で取り組んでいく」
と強い決意を述べている。これに反応したのは、拉致被害者家族の蓮池透さんだ。自身のツイッターで、
〈司令塔? この期に及んで。どうやって?〉
とつぶやいた。北朝鮮に残された拉致被害者の家族が04年に帰国して以降、成果ゼロの「司令塔」に、今さら何が期待できるだろうか。同集会では、そんな積もり積もった不満が、安倍総理に向けられる一幕もあった。
「安倍総理が途中退席して会場から帰ろうとしたら、全国から約1000人集まった参加者の中から『もう帰るのか!』などとヤジが飛んだんです。安倍総理にも聞こえたと思いますが、特に表情を崩さずに去っていきました」(拉致問題の支援団体関係者)
口先ばかりの思わせぶりな態度にほとほと嫌気がさしているようだ。
官房副長官時代に最前線で取り組んでいた頃とはかけ離れ、今や単なる政治パフォーマンスと受け止められかねない行動も見せていた。
4月15日、拉致被害者の横田めぐみさんの父・滋さんが体調不良で入院中の病室に安倍総理がお見舞いに訪れたのだが‥‥。
「事前に連絡を受けていた横田さん側は、滋さんの体調を考慮してお見舞いを断ったそうです。それなのに押しかけられ、体調が悪い時に15分も対応させられたら、体への負担も大きかったでしょう」(支援団体関係者)
信頼関係も崩れて、ブーイングやヤジを浴びてもしかたがないのが現状のようなのだ。