教誨室を出ると、前室という部屋へと移動する。執行前の最後の祈りの場所である。ここで仏式かキリスト教式かなど、どんな祈りをささげたいかを聞かれるというが、
「カルト教祖に対し、その質問はブラックジョークのようですが、まさかオウムのマントラを唱えたいとは言わなかったのでは‥‥」(何人もの死刑に立ち会った元教誨師)
そしていよいよ執行室へと連れていかれた麻原死刑囚は、手錠をかけられると同時に頭から袋をかぶせられ、最後に足首を縛られて絞首刑台へ。首にロープがかかるや、執行ボタンが押され、足元の踏み板がバタンと開いて自然落下──。
「ここでも最後に大暴れしたり、大小便を垂れ流してうめき声を上げる死刑囚を多数、見てきました。実はロープを首にかける刑務官の技術によって、苦しみは違ってきます。喉仏にグッとかけた状態で吊るされると、急激に絞まって延髄が切れるため、わずか8秒ほどで意識を失うことになる。ところが、一部が顎にかかった状態でブラ下がると十分に絞まらず、相当暴れることになります。この場合、意識を失うまでに1分ほどかかることもあります」(元教誨師)
絶命を確認し、検視を終えた遺体は、24時間は拘置所に安置。やがて棺に入れられ、家族などに引き取られることになる。
今回、このタイミングで7人の死刑が執行された理由は何なのか。政治部記者によれば、
「国会会期中には執行しない、という通説がありましたが、今回は異例です」
これまで報じてきたように、来年5月には改元を迎え、それに伴って恩赦が出ることもある。仮に麻原死刑囚が恩赦で無期懲役にでも減刑されようものなら、大騒動に発展することは想像に難くない。
さらには、改元が近づいたタイミングでの死刑執行は、天皇陛下や皇位引き継ぎを受ける皇太子殿下に大きな精神的負担をかけることになりかねない。少なくとも今年中には執行しておく必要があったのだ。
ここに、今回の執行の引き金となった政府の動きを指摘する公安関係者の証言がある。
「米朝会談を機に動き始めた北朝鮮との関連です。韓国と日本には今も、治安攪乱や要人暗殺を目的とした北朝鮮のスパイ、工作員が潜んでいます。その工作員がアレフなどの宗教団体に入り込むことがある。カルト的な信者はイザという時に、自爆テロなどの過激な行動に出てくるからです」
北朝鮮の金正恩委員長は現在、中国を後ろ盾にしてアメリカと交渉しようとしている。そうした軟化路線に反発するグループもあり、北朝鮮内では派閥闘争がすでに始まっているという。