実際、アレフは、これまでにも大きな分裂を2度引き起こしている。07年には、アレフに在籍していた上祐氏が、教祖・麻原の罪を明らかにするよう求めたのに対し、教団の中枢を占めていた松本家がこれを拒否。路線対立により上祐一派は一掃され、アレフから独立。宗形氏も上祐氏らとともに、麻原の罪を糾弾し、脱会信者を支援する新団体「ひかりの輪」の設立に至った経緯がある。
「当時、アレフの幹部や信者からは『悪魔が取りついている』と徹底的に非難されました。路線対立から、麻原の妻、次女、三女が中心になって上祐一派を排除しようという動きが出始めたんです。『上祐に毒を盛ろう』という幹部すらいました。アレフがいまだに妄信を続けているのは間違いなく、11年に(公証人役場事務長逮捕監禁致死事件などに関与し、警察庁の特別手配被疑者に指定された)平田信が出頭した時には、『私たちの帰依が届いたからグルの死刑執行が延びた』と喜んでいたそうです。同一事件の裁判が行われている間は、死刑の執行がありませんから」(宗形氏)
また、アレフ内で一枚岩だと思われていた松本家も離合集散を繰り返していたことが明らかになった。2015年のことだ。
「ひかりの輪が団体規制法に基づく観察処分の継続を不服として国を相手に起こした訴訟のさなか、裁判資料でアレフの現状に触れることがありました。麻原の次男をアレフに復帰させようとする麻原妻と反対派が対立。特に三女派との対立が起こりました。三女に近いといわれている金沢支部は事実上分派し、対立しています(山田らの集団)。オウムの教義から考えて、麻原が亡くなったら麻原が最終解脱者と認定した息子を持ち出す方向性もあるのかもしれませんが、麻原こそがアレフ信者の帰依の対象です。よって、やはり今回死刑が執行されたことで、これがアレフ信者が妄信をやめる大きなきっかけになることは間違いないと思っています」(宗形氏)
ところが、麻原の遺骨を巡っては、麻原の妻と三女が休戦。再び共同歩調を取っているのは前述のとおり。一方で、麻原の妻が依然としてアレフの支援を受けているのに対し、三女は教団との決別を宣言。麻原の死で後継者問題を抱えるアレフにとって遺骨もさることながら、松本家の複雑な家族関係も今後の教団運営において波乱要素となりそうなのだ。公安関係者が明かす。
「結局、これまでのアレフの分裂騒動はいずれも教団内の主導権争いが端緒となっている。今のところ、アレフと松本家の関係は明確にされていませんが、今回の死刑執行で麻原の神格化を標榜する後継者が出てくるのは時間の問題でしょう」
早ければ、今月中にも残る6人の死刑執行がなされる可能性もあるオウム真理教事件。教祖の死で、これまで先送りにしてきたオウムの社会的責任が再び問われることとなりそうだ。