中村GMが獲得に動いたのは西岡だけではない。前ヤンキース傘下3Aの福留孝介(35)にも猛アプローチをかけたのである。西岡同様、かつての面影はなく、メジャー落ちの選手。しかも今年35歳。にもかかわらず、同じく獲得に参加するDeNA、中日に対抗心を燃やし、3年6億円もの条件を提示した。さらにあろうことか、住居にはコンシェルジュを付けるとか、将来のコーチ手形を切るだとか、これでもかと厚遇をチラつかせて、獲得に必死なのである。
「今季の結果を考えれば、来年は絶対勝たなければいけない。だから即戦力が必要なんでしょう。目先の勝ちばかりを気にして1カ月先のことなんてまったく考えていない、今季の戦いぶりと一緒。それが今の阪神なのです」(安達氏)
伸び盛りの若手よりもベテランの起用に走る。負けても勝っても、メンバーは固定のまま。今年も後半戦になって、ようやくベンチは選手の入れ替えに動くありさまだった。
「監督、コーチ陣も責任逃れをするような采配が目立っていた。ベテラン勢を出しておけば、『このメンバーで戦って負けたならしかたがないでしょう』と言い訳ができる。結局、選手たちに責任をなすりつけているわけです。そんな方針の中で若手が育つわけがない」(前出・球団関係者)
前出・阪神担当記者も追随する。
「今回の補強も、フロントとすれば周囲から『何もしてないじゃないか』と言われるのが怖いからやっているようにしか思えない。これぐらい自分たちは動いたんだ、という大義名分が必要なのでしょう」
保身に走る球団。もし、福留を獲得しスタメン起用すれば、昨年ドラフト1位で入団した大型外野手であり、その育成が至上命題とされている伊藤隼太(23)の居場所を奪うことになる。新人育成をうたいながら、球団は試合に出るチャンスすら奪おうとする矛盾。成長どころか、才能が潰れてしまうのではないか。
「この秋季キャンプを経験した伊藤は、『手応えを感じているので、1日でも休むと感覚がなくなりそうで怖い』と話し、やる気がみなぎっている。ルーキーイヤーの今年は22試合の出場で打率1割4分8厘ながら、潜在能力は大きいと期待されている。『多少のミスや不調には目をつぶって使い続け、大きく育てるべき』との声が球団内からあるのに、福留が欲しいとはどういうことなのか」(前出・阪神担当記者)
将来の阪神を背負うべきスター候補より、ロートル&ポンコツのFA選手が大事だというのだ。