社会

秋津壽男“どっち?”の健康学「加齢とともに起こる体の変化とその影響「湿しん」と「ほくろ」はどっちが危険?」

 人間は年を取るとさまざまな老化現象が出てきます。毛がフサフサしている人は、40代になると白髪が出始めますが、これは毛根にある色素を作るメラノサイトという細胞が急激に減るためです。白髪が生えると「髪の毛が薄くなるのでは」と思う人もいますが、白髪と抜け毛に直接的な関係はないので、心配ご無用です。

 白髪と同じく加齢で増えるのが「湿しん」と「ほくろ」です。ではここで質問です。重篤な病気につながるのはどちらでしょうか。

 まず、湿しんのほとんどが「乾燥性湿しん」です。これは皮膚の油分が足りずにカサカサするのが特徴です。丸い紅斑の上に小さな丘しんができる貨幣状湿しんは、出始めると驚きますが、急性湿しんの一種で大病に結びついたりはしません。湿しん以外に、加齢により皮脂欠乏症皮膚炎(皮膚に細かい鱗屑(りんせつ)や亀甲模様のしわが生じる症状)や皮膚掻痒(そうよう)症(皮膚の乾燥や皮脂の分泌低下からひび割れのようになり、かゆみを生じる症状)、じんましんなどもできやすくなりますが、これらも大病とは無縁です。

 湿しんと同じく加齢とともに増えるのが「シミ」です。特に女性の場合、顔などにできると印象を変えてしまうなど気になる存在ですが、シミは肌の基礎代謝の低下が原因であり、白髪と同じく、メラノサイトが作り出したメラニン色素が皮膚に沈着してできるもので、病気の前兆はありません。。紫外線の害を防ぐためメラニンが皮膚をガードするもので、こちらも心配ご無用です。

 湿しんとは異なり、怖いのは、ほくろです。こちらはいわば「細胞のエラー」であり、皮膚がんの可能性があるからです。一見ほくろに見えて、実はがんであるのが悪性黒色腫(=メラノーマ)です。

 このメラノーマとは、皮膚のメラニン色素ががん化した腫瘍です。皮膚がんの初期はほくろと見間違えますが、手のひら、足の裏、手足の指や爪などにできやすく、特に爪にできるとがんの可能性が高くなります。

 また、通常のほくろと異なり、形が左右非対称でいびつだと要注意です。手足以外にも胸や背中、腹、顔にできることもあり、大きさが6ミリを超え、色が黒以外に青や白、灰色、茶色であったり、表面が隆起しているなどの症状もメラノーマの可能性が高く、しだいに大きくなるなど変化が早い場合、がんが成長していると考えられます。

 こうした皮膚がんは非常に転移が早く、予後も悪いのが特徴です。近年、オプジーボという薬ができたおかげでメラノーマも治るようになりましたが、それまでは転移防止のため手足を切断するしか治療方法がありませんでした。

 メラノーマではなくとも、盛り上がったほくろで表面が割れているようなケースも、皮膚がんの可能性があります。こちらは基底細胞がんと呼ばれ、皮膚の最下層にある細胞から発生するがんであり、多くが高齢者の顔面(特に鼻やまぶたの周辺)に発生します。

 初期は黒や黒褐色で軽く盛り上がっており、多くはほくろと勘違いしますが、時間の経過とともにゆっくりと大きくなっていき、しだいに硬い腫瘤を形成します。皮膚がん全体の4分の1が、この基底細胞がんです。かゆみや痛みこそありませんが、ほくろがしだいに大きくなり、表面がザラザラしている場合、皮膚がんの可能性を疑ってください。出血するほくろは特に危険です。

 こうした皮膚がんの発症は年間7000人と言われていますが、他のがんと比べて再発の可能性が低いのも特徴です。外科手術での除去など正しい治療が有効となりますので、早めの受診をしてください。

■プロフィール 秋津壽男(あきつ・としお) 1954年和歌山県生まれ。大阪大学工学部を卒業後、再び大学受験をして和歌山県立医科大学医学部に入学。卒業後、循環器内科に入局し、心臓カテーテル、ドップラー心エコーなどを学ぶ。その後、品川区戸越に秋津医院を開業。

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