髪も体の一部。元から正さないとダメ。これが漢方の考え方だ。漢方薬や指圧で、頭に青春がよみがえった例は多い。
1919年創業の老舗漢方薬メーカー「建林松鶴堂」の建林佳壮社長が話す。
「薄毛はさまざまな要因が絡み合っているため、漢方薬を飲んだだけで髪がフサフサにはなりにくい。しかし漢方は、体質改善に高い効果が期待できるので、脱毛の予防、薄毛の解消に大いなる期待ができます」
漢方では人間の体は「気」「血」「水」の3つで構成されていると考え、このバランスが崩れた時に不都合が起きると見る。
「漢方では髪の毛は『血の余り』と考えられています。十分な血液があるからこそ、髪の毛が作られるというもので、抜け毛や薄毛の原因は、血が不足している状態と見て『血虚』と言います。その場合は『当帰芍薬散』や『十全大補湯』がお勧めです」(建林氏)
そして「水」に属する「腎」、これは内臓を指すが、この腎の衰えも薄毛の原因と考えられている。
腎の衰え、すなわち内臓機能の低下を漢方では「腎虚」と言い、漢方が最も得意とする領域である。
「これには、新陳代謝を高めて内臓の働きをよくする『八味地黄丸』や『補中益気湯』がいい。年配の方にもぜひ」(建林氏)
また、気の乱れも薄毛の原因。漢方でいう「気」とは生命活動のエネルギーを指す。気の乱れは代謝を悪くし、精神にも影響を与えてストレスが多くなり、不眠にもなる。
「気の乱れ、『気虚』には『柴胡加竜骨牡蛎湯』や『桂枝加竜骨牡蛎湯』がいいでしょう」(建林氏)
副作用の少ない漢方薬とはいえ、自己判断で複数の種類を飲むのは危険。漢方医や薬剤師に相談してから飲むようにしたい。
この漢方と似た考えに基づくのが、鍼灸・指圧・マッサージである。東洋医学で言うツボを刺激し、経絡を正すと毛が生えるという。
「和光治療院」を開設し、漢方講座の講師も務める平地治美氏が話す。
「肩コリや首のコリを治療していると、思いがけず発毛して喜ばれることがあります」
首のツボとしては「天柱」「風池」。肩のツボでは「肩井(けんせい)」「膏肓(こうこう)」。頭では「百会(ひゃくえ)」「上星(じょうせい)」などが挙げられるという。
そして平地氏がよく使うのが、淤血を吸い出す「刺絡(らく)」という方法だ。
「刺絡というのは、体を正常に循環しなくなった古い血を直接取り除く特殊な方法です。手や針または吸い玉を使って血をしぼり取ります」(平地氏)
円形脱毛症などの場合、この方法で生えてくることもあるという。頭や首のツボなら自分でもマッサージはできる。
「百会は頭頂部のややへこんでいる部分で、天柱は、首筋の真ん中に通っている筋の両脇の髪の付け根にある。風池は、天柱の指1本分ほど外側のくぼみの部分。ここを気持ちのいい程度に適度な力加減で押すだけです」(平地氏)
これだけで頭皮の血液循環がよくなり、毛乳頭細胞の働きが活発になって、穏やかな毛が生え、脱毛しづらくなるという。ただし、あまり強く刺激を与えると逆効果とのことだった。