薄毛の治療を受ける人は、薄毛で悩んでいる男性の半分ほどしかいないという。しかし現在では薄毛治療の医院が増え、研究も進んでいる。1人で悩んでいることはないのだ。
薄毛治療といえば、もちろん医院での投薬治療が王道だろう。医療ジャーナリストの谷川渓氏が解説する。
「脱毛を引き起こすDHT(男性ホルモン)を抑制する内服薬と発毛を促す内服・外用薬を併用することで頭皮の状態を改善し、育毛・発毛を促進します。上限は1カ月3万円ほどで、効果が現れるまでには半年ほどの時間が必要でしょうね」
それでも効果がなければ、最新発毛医療にすがりたい。ここに「バンパイア療法」と呼ばれているものがある。
正式にはPRP(自己多血小板血漿)療法と言われ、整形外科などでは以前からスポーツ選手の肘内側・外側上顆炎などの治療に行われていた再生医療の一つだ。ヤンキースの田中将大が肘の靭帯修復のために施術を受け、話題になった療法である。
これを発毛に利用し始めると、2011年に行われた臨床試験で高い効果があったが、16年から治療が始まったばかりで、まだ治療を行うクリニックは少ない。
この先進発毛治療を行っている米国ボズレー社(本社・ロサンゼルス)は、我が国の総合毛髪関連企業「アデランス」のグループ企業で、米国最大の毛髪移植クリニックとして知られた抜け毛対策ソリューションも提供している。ボズレー社のPRP療法をアデランス研究開発部次長で毛髪診断士の伊藤憲男氏が説明してくれた。
「PRP治療は、患者自身の血液を採取、PRP組織(多血小板血漿)を取り出し、頭皮に注射するものです。もともと体内にある成分で自身の組織の再生を促進させますので、安心感があります。日本ではまだ行っている医療機関は多くありませんが、今後さらに研究され、注目度が高まるであろう治療の一つであると言えます」
自分の体から採取した血液を頭皮に直接注入することで発毛を促す手法だから、吸血鬼のバンパイアになぞらえて命名されたのだという。今一番の人気治療法だというが、総額50万~90万円という費用の高さが頭の痛いところか。