今年のプロ野球・ドラフト会議は、大学&社会人の野手にも注目選手が目白押しだ。
何といっても注目は今年の大学生No.1野手と評される立命館大の辰巳涼介外野手だ。身長178センチ、体重68キロと細身ではあるが、その身体能力は高く、脚力は何と一塁到達タイムで驚異の3秒71を叩き出したほど。これは阪神で活躍した赤星憲広の3秒74を超えるレベルの速さなのだ。東北楽天の愛敬尚史スカウトが「足と(遠投120メートルの)肩は今、プロに入っても1軍でトップレベル」というようにプロも高評価。さらに打撃も2年生時の日米大学野球で豪快なバックスクリーン弾を放つなど、細身ながらツボにはまれば150キロ超のヘッドスピードで一発長打も期待できる。
大学進学後は1年春からレギュラーの座を勝ち取り、8季で通算95試合に出場し、通算打率3割2分4厘をマーク。2年と3年の秋、及び4年の春にベストナインを獲得したほか、この4年春には打率4割2分9厘のキャリアハイをマークしてMVPも受賞している。リーグ戦最後となった4年秋には48打数18安打で打率3割7分5厘を記録し、初の首位打者を獲得した。振り切るスイングで鋭い打球を弾き返す左の好打者である。
大学生内野手なら東洋大の大型セカンド・中川圭太。1年春からレギュラーの座をつかみ、4年春までの7季のうち、一部リーグで計63試合に出場。打率は2割8分9厘ながら、69安打中23本の長打(うち本塁打8本)を記録し、そのパンチ力とミート力でプロのスカウトから高い評価を獲得した。力強いスイングから強打を放つ右の強打者で、右方向への打球も持ち味の1つ。国際大会で打率4割1分5厘と高い結果を残したように勝負強さも魅力だ。
高卒の捕手はそのほとんどが将来性を見込まれて指名されるが、大卒ならば即戦力の期待がかかる。そういう意味で今年は2人の捕手に注目したい。まずは亜細亜大の頓宮裕真だ。二塁への送球2秒を切る強肩に加えて右打席から放つ長打力も魅力。1年春からリーグ戦に出場し、4年春までの7季で打率2割5分2厘ながら、9本塁打を記録。この秋のリーグ戦では3戦連発の4本塁打を放つなど、さらに評価を高めている。
強肩なら大阪商業大の太田光も負けていない。二塁送球1.9秒台を誇り、好リードで投手陣を支え、チームの正捕手として6度のリーグ優勝を成し遂げた。キャッチングの良さと絶妙なインサイドワークが持ち味な反面、打撃が課題で4年間計8季の成績は通算94試合で打率は2割6分。それでも4年春には46打数24安打で5割2分2厘の高打率をマークし、リーグ戦初の首位打者に輝いた。振り切るスイングで弾き返す右打者だが、外角の球を捉えて逆方向に流し打つこともできる。
一方、社会人では東京ガスの笹川晃平と大阪ガスの近本光司という外野手2人に注目だ。
笹川は東洋大時代に通算104安打に12本塁打をマーク。東京ガス入社後は新人ながら4番・外野レギュラーとして起用された。右打席から鋭い打球を放つ強打者で、守っても守備範囲が広く、スライディングキャッチで投手を助ける場面も多々。遠投120メートルの強肩でもあり、まさに3拍子そろった外野手である。
かたや近本は身長170センチと小柄ながらミート力のある左の巧打者。左右に打ち分ける技術に加えて一塁到達タイムが3.9秒前後と抜群の脚力を誇る俊足巧打がウリだ。今年の都市対抗野球では打率5割2分4厘で首位打者に輝くとともにMVPとなる橋戸賞を受賞。4盗塁も記録しており、打撃センスと驚異の脚力に注目が集まっている。
(高校野球評論家・上杉純也)