日本人のソウルフードである「味噌」。その味噌が持つ驚くべきパワーに今、注目が集まっている。ガンや高血圧を防ぎ、整腸効果が期待できるほか、その他の健康力をさらに高めるという。「長生きみそ玉」を考
案した順天堂大学医学部の小林弘幸教授は、「味噌汁こそ最強の健康食」と力説する──。
今年6月に刊行された小林弘幸教授の著書「医者が考案した『長生きみそ汁』」(アスコム)は現在、30万部を突破するベストセラーとなっている。
「日本人にとって最も身近な食材である味噌と、最も身近な料理である味噌汁をテーマにした本だったので、多くの人が関心を持ってくれたのでしょう」
小林教授の専門は、自律神経研究と腸研究。長年にわたって患者を診察してきた経験から、「病気や体調不良は、生活習慣、特に食事によるところが大きい」との結論に至ったという。
それと同時に、長年の研究過程で、食材が持つ数多くの力にも気づかされる。中でも、日本人にとって、より身近な食材に驚くべき価値を発見した。それが、日本を代表する発酵食品である「味噌」だった。
「私自身の話ですが、数年前、血糖値が上がり気味だった時期があったんです。そこで、少しダイエットして、血糖値を下げようと試みました。しかし、体重がなかなか落ちない。思案していたところ、身近な食材のわりには、その健康効果についてあまり言及されていない味噌を思いついた。そして、たまたま知人から大量に送ってもらっていたたまねぎを具にした味噌汁を夕食時に飲むようにしました。すると、2週間で体重が2.5キロ落ち、血糖値も正常に戻ったのです」
これをきっかけに、小林教授はある仮説を立てた。
〈ふだん飲んでいる味噌汁をさらにパワーアップできれば、あらゆる病気を遠ざけ、体調不良を改善する「最強の味噌汁」が作れるのではないか〉と。
こうして、試行錯誤の末に考案されたのが「長生きみそ汁」なのだ。
使用する素材は「白みそ」「赤みそ」「たまねぎ」「りんご酢」の4つ。これらを組み合わせて冷凍した「長生きみそ玉」(下記レシピを参照)を作り置きしておき、1日1杯、150ミリリットルのお湯で溶かして飲むだけで健康効果が期待できるわけだが、普通の味噌汁と比べて最強無敵なのは、基本となる素材を見直したことに理由がある。
そもそも味噌の原料の大豆は、タンパク質やビタミン、食物繊維など豊富な栄養素を備えている。そして発酵の過程でアミノ酸を作り出し、さらに栄養価の高い食材に生まれ変わる。
そうした味噌の中でも「白みそ」にはストレスを軽減するGABA、「赤みそ」には血糖値の上昇を抑えるメラノイジン、「たまねぎ」には血管年齢を若返らせるケルセチン、「りんご酢」に含まれるリンゴポリフェノールには、ポリフェノールの中でも群を抜いて強い抗酸化作用があり、注目を集めているという。
「すごい健康成分が含まれた4つの素材を掛け合わせることで、それぞれの素材が互いの弱点を補強し合う。普通の味噌汁では摂れていない可能性のある成分も、漏らさず摂れます」
■「長生きみそ玉」の作り方
・材料(10個分/みそ汁10杯分):白みそ80g(ストレスを軽減するGABAがたっぷり)、赤みそ80g(血糖値の上昇を抑えるメラノイジンが豊富)、たまねぎ150g(Mサイズ約1個、ケルセチンが血管年齢を若返らせる)、りんご酢大さじ1(りんごポリフェノールの抗酸化力は協力)
【1】玉ねぎをすりおろす:バラバラになるのを防ぐため、たまねぎの根は残したまま。事前に冷蔵庫で冷やし、ゆっくりすりおろすと、目が痛くなるのを抑えられる。
【2】みそとリンゴ酢を混ぜ合わせる:【1】に白みそ、赤みそ、リンゴ酢を加えて混ぜ合わせる。最初は混ざりにくく感じるが、たまねぎの水分のおかげで、すぐに混ざり合う。
【3】製氷器に入れて冷凍室へ:製氷器に分け入れ、冷凍室で2~3時間凍らせれば完成。シャーベットぐらいの固さなので、使う時はフォークで簡単に取り出せる。