●ゲスト:近田春夫(ちかだ・はるお) 1951年、東京都生まれ。慶応大学在学中にキーボード奏者としてカルメン・マキ・バンドや内田裕也グループなどに参加。72年に「近田春夫&ハルヲフォン」を結成、76年アルバムデビュー。その後も近田春夫&BEEF、近田春夫&ビブラトーンズ、ビブラストーンといった、ジャンル・形態を問わない音楽活動を展開。77年、「オールナイトニッポン」の火曜2部パーソナリティを務め、78年、雑誌「POPEYE」で「THE 歌謡曲」の連載を開始、さらに同年10月スタートのTBS系ドラマ「ムー一族」にレギュラー出演するなど、俳優、タレント、DJ、作詞家、作曲家、プロデューサー、歌謡曲評論家としても活躍。現在は、元ハルヲフォンのメンバーと組んだ新バンド「活躍中」の他、DJ・OMBとのユニット「LUNASUN」でも活動中。97年より「週刊文春」で音楽コラム「考えるヒット」連載中。10月31日、近田春夫名義としては38年ぶりのソロアルバム「超冗談だから」(ビクター・エンタテインメント)が発売。
「近田春夫&ハルヲフォン」で電撃的にデビュー、以後もさまざまな音楽ジャンルを横断しながらテレビ・ラジオ出演、コラム執筆など多彩な才能で活躍中のミュージシャン・近田春夫。このたび38年ぶりのソロアルバム発売が決定、その報を受けた天才テリーも気が気じゃない!?
テリー 大学院に通う車の中で、ニューアルバムの「超冗談だから」を聴かせてもらいましたよ。1曲目の「ご機嫌カブリオレ」、秋元康さんの詞がすごくて驚いちゃった。
近田 うん、本当にさすがだね。あれはまさに叙事詩ですよ。流れている時間の長さがすごい壮大でさ、曲は軽くて一見、大ざっぱだけど、ものすごく深いこと言ってるから。たぶん秋元は、俺が車に乗っていた頃のイメージで書いたんだろうね。
テリー これ、ソロアルバムとしては38年ぶりらしいけど、どうしてこの時期に出すことになったの?
近田 最初はそんなつもり全然なかったんですよ。このアルバムをプロデュースしてくれたレコード会社の川口さんという人から、あるアーティストへの楽曲提供の依頼があって、それを作って現場に行って仮歌を入れたの。そしたら、それを聴いた川口さんが「すごくいい! 近田さん、レコード出しましょう!」とか言うわけよ。
テリー 即決なんだ、偉いね!
近田 フフフ、俺もそう思う。でも普通、そんなのリップサービスだと思うじゃない。今、相当売れている人でもCD出すのは大変なのに、俺なんか事務所もないし、歌手としての活動もずっとしていないわけだから。なので「曲を書くのは面倒だから、現場に行って歌うだけのアイドルみたいな感じならいい」とか言っちゃったわけ。
テリー いいねぇ。
近田 そしたら、川口さんから「こんなの、どうですか?」なんて、どんどん曲が送られてきて「これはどうやら本気なんだな」とやっと思い始めた(笑)。そこでアルバムタイトルにもなった「超冗談だから」という曲のメロディーだけのデモテープを聴いて「ちょっと新しい感じもあって、おもしろい曲だな」と。
テリー あっ、それ、俺も思った。この曲も詞がいいよね。
近田 それはハロー!プロジェクトのアイドルにけっこう詞を提供している児玉雨子さんが書いてくれた。俺、「週刊文春」の「考えるヒット」っていう連載で児玉さんが手がけた曲を何回か扱ったんだけど、歌謡曲的な語彙も豊富なうえに、ヒップホップ以降とも言えるおもしろい言葉を乗せる人でさ。
テリー ああ、確かにそういう感じがあるよ。
近田 で、彼女に詞をお願いできないかな、と川口さんに相談したら、すぐ連絡してくれて。この曲をきっかけにして、自分が本気でアルバムに取り組もうと思ったんですよ。
テリー 曲はどのくらいの中からのセレクトなの? 曲選びでこだわったところとか、あるの。
近田 65曲ぐらいからだけど、俺は選んでいない。全部、川口さん任せ。
テリー じゃあ、本当にアイドルと同じだね。
近田 そう、今回は現場に行って歌うだけ。「まな板の鯉」で行くというスタンスは最後まで貫きました。