芸能

「悪役商会」八名信夫が語る“悪役の心得”

 俳優歴55年、ご存じ「悪役商会」の八名信夫(77)。大ベテランが語る“悪役の心得・3カ条”とは――。

 まずあげたのが、“媚びない”ということ。

「役者ってのはね。主役に媚び、プロデューサーに媚び、監督に媚び‥‥まあ、また使ってください、よろしくお願いしますってことだな。でも、それじゃ、悪役はできない。目が死んでしまうんだよ。たとえにっこりしていても、目の奥に殺意がなくてはいけない。そのために大切なのは、主役を嫌うこと。コイツ、いつか殺やってやると、気持ちのうえでは思ってないと。今の若い衆に言ってもわからないだろうけど、俺らの頃は、撮影所に入ったら(主役とは)モノも言わなかったもんね。あちらから、『ここに来て、一緒にメシ食えよ』と言われても、『いや、いいっす』。何だ、この野郎って思われたこともあったけど、それはそれでかまわない」

 さらに、媚びない意味には心的なモノだけではなく、物理的なモノもある。

「目先の銭を追うな。当時の東映は撮影の場で、いくらやるからやってくれ‥‥ということが多かった。でも、そんなことやっちゃいけない。キチンと台本を読んでからやらないと、悪役に深みが出ない」

 まさに、悪役心得の基本といった感だが、次にあげたのは技術的、あるいは細心の心遣いであった。

「“主役にケガをさせない”これは絶対的に大切なこと。俺は体が大きいし(元プロ野球選手)、動きには自信があった。もちろん、自分がケガをしてもダメ。主役に最高の配慮をしつつ、自身の動きも計算しなくちゃいけない」

 そんな八名でも、不可抗力はある。“事件”は鶴田浩二主演のとある映画の撮影現場で起きた。

「俺が鶴田さんに斬りかかるシーンで、それを後ろから若山(富三郎)さんが羽交い締めにして止める。当時、東映では重量感ある迫力を出すため、刀は竹光ではなくジュラ(ルミン)だった。そうしたら、若山さんの眉間にパーンと当たってしまって。当然、NGなんだけど、監督が『若山さん、血が出てますよ』‥‥。そうしたら、『おどれ! 役者の顔に傷つけやがって』と激高してね。殴りかかってきた」

 スター俳優・若山のことである。そこで済めばあるいは事なきを得たかもしれなかったが、済まなかったのは目の前のいまひとりの大スターだ。

「鶴田さん主演の映画ですからね。『八名は俺が連れてきたヤツだ。何だ、手出しやがって! こんな映画出ていられるか。中止や』と行ってしまった。いやあ、あの時はエライことになった! 東映辞めないかんと思いましたよ(笑)」

 結果的に騒動は、鶴田と“兄弟分”とも言われた名物プロデューサー・俊藤浩滋(故人)が鶴田の顔を立てる形で収拾をつけたという。八名は文字どおり肝を冷やしただろうが、この騒動で八名を気に入った若山によってその後、若山組の映画に出演するきっかけになったというのだから、塞翁が馬とでも言うべきか。

 そして、最後に3つ目としてあげたのが、“意外性”である。

「深作監督の『いつかギラギラする日』。これで、ギャングの親分を演じたのですが、アンパンを食いながら、子分に指示を出した。いつも、葉巻とかありきたりのモノでは能がない。これは、『仁義なき戦い』の金子信雄さんや、外国人俳優‥‥アンソニー・クインを参考にした。ユーモアの中にもキチンと殺意は抱いている、みたいなね」

 今でも、刑事役・善人役などは、

「おさまらない、落ち着かない(笑)」

 と言う八名。それだけに、深い3カ条と言えよう。

カテゴリー: 芸能   タグ: , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    デキる既婚者は使ってる「Cuddle(カドル)-既婚者専用マッチングアプリ」で異性の相談相手をつくるワザ

    Sponsored

    30〜40代、既婚。会社でも肩書が付き、責任のある仕事を担うようになった。周囲からは「落ち着いた」なんて言われる年頃だが、順調に見える既婚者ほど、仕事のプレッシャーや人間関係のストレスを感じながら、発散の場がないまま毎日を過ごしてはいないだ…

    カテゴリー: 特集|タグ: , |

    これから人気急上昇する旅行先は「カンボジア・シェムリアップ」コスパ抜群の現地事情

    2025年の旅行者の動向を予測した「トラベルトレンドレポート2025」を、世界の航空券やホテルなどを比較検索するスカイスキャナージャパン(東京都港区)が発表した。同社が保有する膨大な検索データと、日本人1000人を含む世界2万人を対象にした…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , |

    コレクター急増で価格高騰「セ・パ12球団プロ野球トミカ」は「つば九郎」が希少だった

    大谷翔平が「40-40」の偉業を達成してから、しばらくが経ちました。メジャーリーグで1シーズン中に40本塁打、40盗塁を達成したのは史上5人目の快挙とのこと、特に野球に詳しくない私のような人間でも、凄いことだというのはわかります。ところで、…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , |

注目キーワード

人気記事

1
長与千種がカミングアウト「恋愛禁止」を破ったクラッシュ・ギャルズ時代「夜のリング外試合」の相手
2
日本と同じ「ずんぐり体型」アルプス山脈地帯に潜む「ヨーロッパ版ツチノコ」は猛毒を吐く
3
沖縄・那覇「夜の観光産業」に「深刻異変」せんべろ居酒屋に駆逐されたホステスの嘆き
4
段ボール箱に「Ohtani」…メジャーリーグMVP発表前に「疑惑の写真」流出の「ダメだ、こりゃ!」
5
巨人が手ぐすね引いて待つ阪神FA大山悠輔が「ファン感謝デー」に登場する「強心臓」