「陰のフィクサー」として暗躍するエージェント集団。現在はリーディング上位の騎手には全てエージェントがついている。トップ騎手にはもちろん騎乗依頼が多いから、エージェントはそれを上手にさばいていかなければいけない。その結果、いい成績を残すことができれば信頼が増していき、次も有力馬をあてがってもらえるようになっていく。
ただし、どんな依頼もエージェントを通すわけではない。騎手と調教師が師弟関係を結んでいる場合(例えば、吉田豊騎手と大久保洋吉調教師)などは、厩舎から直接依頼されることもある。また、重賞クラスの有力馬は騎手と馬主、調教師との個人的な関係で決まることも多い。これらの場合のエージェントの立場は、いわば連絡係である。
ここで、騎手とエージェントの「契約形態」に言及したい。エージェントの中には賞金の何%かをもらっている者、月額契約で一定の金額をもらっている者、1鞍手配するごとに数千円〜数万円を受け取るケースなど、個々にさまざまなパターンがある。前出・元エージェントが語る。
「定額の場合はだいたい、月額20万〜30万円を騎手からもらうケースが多いでしょう。武豊を担当する大ベテランのエージェント・H氏(元トラックマンで、現在はフリー)などは50万円もらっていると聞きました。GⅠを勝ったりすると、ボーナスが出るなど、100万円ほどになることもある。そういえば、ある専門紙では『会社の看板を背負っているんだから、契約料の半額を会社に納めるように』とのお達しが出ているそうです」
中には、国税局から申告漏れを指摘され、何百万円もの追徴課税を食らった者もいるというから、かなりの金額が動いていることは確かだ。
「岩田康誠、福永祐一、四位洋文というトップジョッキーを抱え、“栗東のドン”と言われる最強エージェント・K氏(フリー)は、2000万円を優に超える収入があるとか。うらやましいかぎりです」(前出・トレセン関係者)
が、もちろんトラブルも発生する。前出・エージェントが明かす。
「馬主から『あの騎手を乗せてほしい』と、個別に口利き料を受け取ることもありますが、その騎手の手配ができず、馬主との関係がこじれたエージェントを知っています。また、騎手がエージェントのやり方に不満を抱いて別のエージェントに移るケースもままある。逆に言うと、トラブル処理をうまくできない人はこの世界でやっていくのは難しいでしょうね」
騎手同様、状況に合わせた巧みな手綱さばきが要求されるのだ。