早いもので2月1日にはキャンプイン。待ちに待った球春が到来する。2019年のプロ野球ペナントレースにはどんなドラマが待ち受けているか──。各チームの戦力編成が出そろい始めた今、野球解説者の江本孟紀氏と谷繁元信氏が打ち合わせナシの直球勝負で展望を語り合った。
江本 昨年末に、原と金本の殿堂入りパーティーに連チャンで行ってきたけど、巨人と阪神の温度差を感じたね。原のパーティーは、王さんや張本さんらOBに加えて、1軍選手もズラリ勢ぞろい。料理はフルコースで、読売の援助が相当あったはず。4年ぶりにチームの指揮を執る原監督の下、V奪還を目指す、決起集会のような雰囲気だった。その一方で、金本のパーティーは、受付に30分以上かかるし、会場内はすし詰め状態。ウーロン茶1杯飲んで、早々に会場をあとにしたよ(苦笑)。いくら昨季、最下位で辞任したとはいえ、球団の格差をひしひしと実感したね。金本が気の毒ですよ。
谷繁 その巨人にとって丸の加入は大きいですね。広島で2年連続MVPを獲得した実力は折り紙つき。FA移籍する選手はピークが過ぎてるケースが多いですけど、(今年4月に30歳になる)丸の選手としてのピークはこれからですから。巨人の重圧に潰されるなど、いろいろ言われていますが、成績が急降下するとは考えにくい。
江本 すでに、原監督は昨季ブレイクした岡本を4番で起用することを明言。恐らく、1番に坂本、丸は3番を任されることになるはず。丸の加入により、ゲレーロや新外国人を下位に置くこともできます。いずれにせよ、原監督は超攻撃的なオーダーを組んでくると思いますよ。
谷繁 これは相手チームからすると相当な脅威ですよ。その意味でも丸がもたらす効果は絶大です。投手陣は、今季よりエースナンバー「18」を背負う菅野を軸に、山口など、先発ローテーションには、ある程度、計算できる投手がいるので、V奪還には新しい勝利の方程式の整備が重要になります。
江本 あと、今回の原新体制では、1軍コーチ未経験の宮本や元木らが名を連ねて“タレント人事”などと揶揄されているけど、人を見る目が厳しい原監督が彼らの野球に対する情熱や真摯な姿勢を評価して抜擢している。もともと明るいキャラクターだし、私はチームにいい影響をもたらすと思っています。ということで、セ・リーグの本命は巨人!
谷繁 V4がかかる広島ですが、実は昨季のチーム防御率は4.12なんです。その一方で691得点はリーグトップ。そして逆転勝ちは12球団トップの38回。ファンからすれば、スリリングな試合展開で、見ていておもしろかったと思いますが、これは裏を返せば、攻撃陣が投手陣の失点をカバーして勝ち星を積み重ねてきたということ。盤石な試合運びができているとは言い難い。昨季、育成から支配下登録され、中継ぎとして47試合に登板したフランスアという左投手がいますけど、この投手がいなければ広島は大苦戦していたと思いますよ。
江本 打線は水物と言われるように、結局のところ、野球は投手力なんですよ。昨季のセ・リーグは、他の5球団がとにかく弱すぎた。基本的に、広島は補強を行わない方針なので、戦力的には、すでに下降ぎみにある。打線では丸が抜け、投手陣に大きな不安が残る広島の4連覇は厳しいと思いますね。
■江本孟紀(えもと・たけのり):1947年、高知県生まれ。高知商、法政大、熊谷組を経て、プロ入り。東映フライヤーズ、南海ホークス、阪神タイガースで活躍。プロ11年間で通算113勝を挙げ、開幕投手を6回務めた。現在は「サンケイスポーツ」のほか、ニッポン放送などでプロ野球解説を行う。400万部の大ベストセラー「プロ野球を10倍楽しく見る方法」(KKベストセラーズ)など著書多数。昨年9月に「変革の檄文 プロ野球を100倍楽しくする方法」(小社刊)を上梓。
■谷繁元信(たにしげ・もとのぶ):1970年、広島県生まれ。江の川高を経て、ドラフト1位指名で大洋に入団。02年にFAで中日に移籍。14~15年に選手兼監督、16年に専任監督を務めた。NPB史上最多の3021試合に出場し、2108安打、打率.240、229本塁打、1040打点。捕手としてゴールデングラブ賞を6回受賞。5度のリーグ優勝(2度の日本一)を経験。現在は「日刊スポーツ」野球評論家ほか、ニッポン放送などで野球解説を行う。