2018年プロ野球がいよいよ開幕する。12球団いずれのファンもボルテージが最高潮に高まる中、展望を語り合うのは“ご意見番”の2人である。広島、ソフトバンクの連覇なるか? 怪物・清宮の活躍は?球界の「ど真ん中」に舌鋒鋭くズバッと切り込む辛口大放談をお届けする。
──清宮幸太郎のプロ入りや、メジャーでも一線級のリリーフとして鳴らした上原浩治の日本球界復帰など、今年も話題の多いシーズンとなりそうですが。
江本 上原はね、僕はいいと思いますよ。去年はマシソンやらカミネロが出てきたら、危なっかしくて顔の前に手をやって、指の隙間から見てなきゃならなかったから。
野村 球団は戦力として見てるわな。
江本 コントロールはいいですからね。少なくとも今季は使える。戦力としては大きいと思いますよ。
──メジャーからの出戻り組としては、ヤクルトに青木宣親も復帰しました。
野村 こっちは俺が監督だったら獲らないね。球団が残ってくれと言ったのに、それを断ってメジャーに行ったわけだから。向こうで契約できないからお願いしますってそんな虫のいい話、通すほうがおかしいよ。
江本 僕が思うのは、メジャーに行ったらみんな大金持ちになって帰ってくるんだから、独立リーグにお金を落としてオーナーにでもなってくれないかな、と。アメリカで稼いだ金を、日本球界の底上げに使ってほしいですね。
野村 今はプロになることじゃなくて、メジャーでやることが野球少年の夢ですよ。日本の野球のレベルが上がったのと同時に、メジャーのレベルは下がってるから、これだけたくさんの日本人選手が行けるわけですけど。昔なら、ONだって通用しないと言われてたのにね。
江本 16チームから30チームになって、まだ増やそうとしてましたからね。30でも多いですよ。球団を増やしすぎたから、せいぜい3Aレベルの選手が、メジャーの半分くらいを占めてるわけです。それでもまだ、日本人のバッターはなかなか通用しないのが現状ですけどね。
──メジャーといえば、やはり今季要注目は、ロサンゼルス・エンゼルスに入団した大谷翔平です。
野村 ホイホイ出戻るんじゃなければ、上を目指すこと自体は悪いことではないと思いますよ。
江本 ただ僕が思うに、二刀流は中途半端になります。間違いありません。何勝して、ホームラン何本打ちたいんですか? 10勝や20本塁打くらいなら、メジャーにはゴロゴロいますよ。それでいいのか、と。あれだけ素質がある選手をダメだという野球人は一人もいないけど、どちらかにしぼれば張本さんや金田さんの記録だって抜けるかもしれないのに、今のままでは規定の投球回数や打席数に届かないままで終わるでしょう。あと大谷もそうでしたけど、実績のない清宮ですらも、日本球界をメジャーへのステップにした契約になっていたりして、それに関わるマネーゲームも含めて、今の球界はいかがなものか、と思ってしまうところはあります。
──名前のあがった清宮ですが、オープン戦では19打席ノーヒットと不調です。
江本 今のところ、金属バットなら反発でホームランになるところが、差し込まれている。力のあるまっすぐに対応できていないですよね。東京都の予選で投げてくる高校生と、プロの球は同じじゃないですから。
野村 まあ、プロの意地でも、すぐには成功してほしくないね。レベルが下がるよ。本人のためにも「プロはすごい」と思わせなきゃいけない。
江本 僕は監督とは逆で、わりとすぐ成功するんじゃないかと思ってます。大谷を例にあげますが、彼はデッドボールって年に1回くらいだったんですよ。打つのはほとんど、外角よりの甘い球だった。今の投手はみんな、厳しい内角をビシビシ攻めて「大谷に当てて壊した」って言われたくないから。清宮に対しても同じじゃないですか。
野村 嘆かわしいね。金田さんが長嶋との初対決で4打席連続三振にしとめたようなプロ根性を見せてほしいもんだけどね。
野村克也(のむら・かつや) プロ野球史上初の捕手三冠王にして、安打、打点、本塁打、出場試合数のいずれも歴代2位の記録を持つ。南海、ヤクルト、阪神、楽天の監督を歴任し、球界随一の知将として輝かしい成績を残した。
江本孟紀(えもと・たけのり) 70年に東映フライヤーズに入団。翌年、南海に移籍すると野村監督に才能を見いだされ活躍。プロ通算113勝で81年に引退する。92年から参議院議員を2期12年務め、現在は独立リーグ・高知ファイティングドッグス総監督。