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伝説の「平成・春のセンバツ対決」東洋大姫路VS花咲徳栄、“2日連続”の死闘!

 高校野球の甲子園大会では昨年の第90回春の選抜から延長戦で13回以降になるとタイブレーク制が導入された。それまでは延長戦は15回までで、同点の場合は再試合が行われていた。この規定になったのは2000年の第72回春の選抜からだが、延長15回制になって春夏通じて初めて引き分け再試合となった試合が東洋大姫路(兵庫)対花咲徳栄(埼玉)。03年第75回春の選抜の準々決勝戦であった。

 東洋大姫路はエースが両親ともにベトナム人ということで話題を集めていたグエン・トラン・フォク・アン。しなやかなフォームから投げ込むキレのある直球と変化球が身上のサウスポーだ。対する花咲徳栄は春の選抜初出場ながら、好投手・福本真史を中心にまとまり、堂々のベスト8進出を果たしたのであった。

 試合は両投手の壮絶な投げ合いとなった。0‐0のまま9回が終了して延長戦へ。

 均衡が破れたのは延長10回表だった。花咲徳栄が2死ながら二塁のチャンスを作ると、ここでタイムリーが飛び出し、待望の先制点を挙げる。だが、粘る東洋大姫路はその裏、1死一、三塁から犠飛で同点に。気づけば延長15回へと突入していた。

 その15回表。花咲徳栄は1死から1番・田中一行がライトへ何でもない飛球を打ち上げた。ところが背走した東洋大姫路のライト・前川直哉は落下点に入りながら痛恨の落球。俊足の田中は三塁にまで達してしまった。このあと2死まで取ったが、3番・川嶋仁徳が打ったセンター方向へのゆるいゴロを東洋大姫路の二塁手・砂川知樹がよく追いついて捕球したものの、一塁へ悪送球。花咲徳栄がようやくタナボタの1点を勝ち越したのだった。

 しかし、東洋大姫路は土壇場の攻撃でヒットと送りバントなどで2死ながら三塁と必死の反抗を見せる。ここで打席に入ったのが、直前の守備で落球した4番・前川。その打球はショートゴロ。万事休すかと思われたが、花咲徳栄の遊撃手・水谷俊一が捕球しそこない、前に弾いてしまった。結局、スコアは2‐2の同点で決着つかず試合終了。翌日に再試合が決まった。両軍の投手はともに1人で15回を投げきり、球数は東洋大姫路のアンが191球、花咲徳栄の福本が220球の熱投となった。春の選抜で大会規定による引き分け再試合は62年第34回大会の準々決勝、作新学院(栃木)対八幡商(滋賀)以来、41年ぶり。夏の選手権を含めると69年第51回大会決勝戦の松山商(愛媛)対三沢(青森)以来、34年ぶりの出来事となったのである。

 翌日の再試合は両チームともエースが先発を回避し、控えの投手が先発した。そのせいか、試合序盤から両軍が激しく点を取り合うシーソーゲームとなった。試合は8回を終わって5‐4と東洋大姫路がわずか1点のリード。8回から登板したエースのアンが9回を抑えるだけだった。

 しかし、花咲徳栄はアンから2死二塁とすると、打席に入ったのはこの試合、レフトで先発出場していたエース・福本だった。ここで福本は意地の適時二塁打を放ち、土壇場で同点に追いついたのである。その裏から花咲徳栄は福本をマウンドへ。福本は9回裏の東洋大姫路の攻撃を無得点に抑え、高校野球の甲子園大会では春夏通じて引き分け再試合も初の延長戦へともつれこんだのである。

 だが、この試合の幕切れはあっけなかった。10回裏に無死から東洋大姫路は三塁打。瀬戸際まで追いつめられた花咲徳栄はこの場面で満塁策を取ったが、ここで福本が投げた2日間トータルの242球目が痛恨のワイルドピッチ。こうして2日間にわたる熱戦は合計25イニング目で決着。試合時間は合計5時間24分にも及んだ“死闘”だった。

(高校野球評論家・上杉純也)=文中敬称略=

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