誰もが口ずさむヒット曲はない。それでも、半世紀以上にわたって音楽界をリードした男の死を日本中が悼んだ。甘ったるい美辞麗句なんかいらない。とがったアジテーションで口角泡を飛ばし、映画、CM、政治、ワイドショーで猛毒を放ち続けたロケンローラー。その破天荒すぎる伝説を追悼公開する!
66年のビートルズ武道館公演の前座で「朝日のない街」を英語で熱唱。自主制作の主演映画「コミック雑誌なんかいらない!」(ニュー・センチュリー・プロデューサーズ)はカンヌ国際映画祭に招待され、年越しライブ「ニューイヤーズワールドロックフェス」をはじめ、海外からはジェフ・ベック、フランク・ザッパの来日にも尽力。ジョン・レノンとNYダコタハウスで酒浸り、ミック・ジャガーとはマブダチ!?
数々の殿堂入りエピソードを誇る日本ロック界のカリスマ・内田裕也(享年79)。だが、そんな偉業を差し置き、誰もの脳裏にこってり焼き印を押した伝説の事件が、91年の都知事選でのパフォーマンスだろう。
尊敬するアントニオ猪木が直前に出馬を断念したことで一念発起。電撃出馬を決めた裕也は、政見放送で開口一番、ジョン・レノンの「パワー・トゥ・ザ・ピープル」を歌い出すと、そのまま英語で自己紹介。ついでに頭脳警察の「コミック雑誌なんか要らない」を歌い出す独演モードに。それでも制限時間を残したままネタ切れ、残り30秒は完黙し、最後は小声で「ヨロシク」と締めくくった。
「公共の電波で放送禁止用語の“ファッキン”を使った選挙演説は話題を呼び、獲得票ではドクター中松氏を上回る5位。泡沫候補のそしりを返上する5万4000票を獲得しました。実は、当初は公約を読み上げる予定だったのですが、NHKからトレードマークのバンダナを『鉢巻きは禁止』などと文句をつけられて急きょ気が変わり、全てアドリブで乗り切ったそうです」(芸能デスク)
落選直後、週刊アサヒ芸能連載コラム「もう許さん!」に登場。
「激友・黒田征太郎氏とモメ始め、AYAMATTA!」
「何故かWADAアキコ氏が横に座ってSEKKYOはじめた」
など、独特のローマ字交じりのリズミカルな文章で、泥酔した際の失態エピソードをつづっている。
「初回、打ち合わせを兼ねてホテルロビーで待ち合わせたところ、いきなり『ふざけんなコノヤロー』と公衆電話を蹴飛ばし始めた。やっぱり裕也さんはタダ者じゃない、武闘派ロッカーだというパフォーマンスを目の当たりにしました」(週刊アサヒ芸能担当記者)
ロックに欠かせないのがナオン話だ。昨年9月に先立った妻・樹木希林(享年75)とは、故・かまやつひろしの紹介で知り合い、73年に交際半年でスピード婚。超個性派同士の結婚生活は2年ももたず別居へ。それでも、76年に出産した長女・也哉子(43)を身ごもったことが発覚すると、
「ホントに俺の子か?(演出家の)久世(光彦)さんの子じゃねーのか?」
と、オダを上げ、さすがに希林に黒電話でぶっ飛ばされたという。
その後、88年公開の映画「花園の迷宮」(東映)で共演した島田陽子(65)との不倫が発覚。島田を伴った正月ハワイ旅行はなんと、偶然にも妻・希林、娘・也哉子と同じ飛行機となり、ロックの重鎮もこの時ばかりは絶句。
「バカヤロー! 撮るんじゃねぇ」
と、写真誌カメラマンに詰め寄る騒動となった。
「11年には50歳のキャビンアテンダントを相手にストーカー事件を起こして逮捕。『ロックンロールに免じて勘弁してほしい』と片膝をついて謝罪会見しました。相手女性に見切りをつけられた裕也さんは、フライト中の女性宅に侵入し、トイレで出した“大”を自分のパンツにこすりつけて部屋に撒き散らすなど、荒らしまくったそうです。それでも、こんな危ない人間を野放しにはできないと離婚しなかった希林さんも、サスガとしか言えません」(芸能デスク)
裕也が「怖いのはKK(きききりん)さん」と恐れていたのも、ごもっとも。