テリー しかし、そこまで熱心に役者を目指していたのに、なぜその夢をあきらめてしまったの。
朝比奈 お芝居ができなかったんです。いろいろと考えすぎちゃったのかもしれませんけれど。
テリー だけどさ、中学生の時からの夢をあっさりと捨てられるものなのかな。俺はそこがとても気になるんだよ。
朝比奈 うーん、苦しくなっちゃったんですかね。お芝居って内面を出さなきゃいけないので、それが苦しくて‥‥(突然、涙があふれてくる)。
テリー (スタッフに向かって)ティッシュを渡してあげて。今でも泣きたくなるほど、苦しいことがあったんだ。
朝比奈 (涙を拭きながら無言でうなずく)。
テリー そうか。それは、例えばセリフが出なくなっちゃうみたいな、テクニカルなこと? それとも「今日は現場に行きたくない」みたいな感じ?
朝比奈 「今日行きたくない」のほうです‥‥さっき言ったワークショップの時、演出家の方にボロクソに叩かれたんです。私の演技を見て「吐き気がする」なんて言われたり‥‥(また涙があふれてくる)。
テリー ええっ、そんなひどいことを!?
朝比奈 「お前はまだ殻に閉じこもっている。全然自分を解放できてない」なんて言われて。
テリー よく聞く話だよ、それ。もっとも、具体性が何もないけどな。
朝比奈 その時言われたのが、満島ひかりさんが園子温監督の映画に出た時、「自分を解放するために、ここでオナニーしてみろ!」って言われて、彼女はそれをやったんだ、と。
テリー それって本当?
朝比奈 実際にはわかりませんが、「それがきっかけで満島さんは演技の幅が広がった、お前はそういう覚悟が足りない」って言われました。
テリー すごい理屈だな。もしかして「だからお前のオッパイを触らせろ」なんて言われなかった?
朝比奈 言われましたし、何か変われるきっかけになるなら‥‥と思って。
テリー わァ、触らせたんだ。それで実際の話、何か変わった?
朝比奈 その3カ月限定のワークショップを通して、技術的な面は自分なりに成長できたとは思うんです。でも、やっぱり自分の求めるところには届かないな、と思ってしまって。
テリー それで辞めたの。
朝比奈 限界を感じてしまいました。私が大学までやってきたのは「素人のお芝居遊び」だったんだな、プロになれるレベルではなかったんだな、と思い知らされた感じです。ワークショップが終わったあと、自分はお芝居が好きかどうかもわからなくなってしまって、このままだと本当にお芝居のことを嫌いになってしまう。なので、いったん距離を置こうと思ったんです。
テリー 言ってることはなんとなくわかるよ。でも、プロのレベルってどこまでのことを指すの? 祐未さんの理想がどこにあるかわからないけれど、仮にレベル10を目標にして頑張っていて、そこにたどりついたら、きっと祐未さんはそこからレベル20を目指し始めるから、いつまでも満足できない。まあ、それを「向上心」というのかもしれないけど。
朝比奈 そうかもしれないですね‥‥。
テリー まあ、基本的に真面目すぎるんだな、祐未さんは。もっと肩の力を抜いたほうがいいよ。