「より強く、印象に残るように」ということだろう。
矢野阪神が5カードぶりの勝ち越しを決めたのは、セパ交流戦最後の対戦となる埼玉西武との一戦だった。矢野燿大監督は「良い勝ち方ができた」と、5、6、7回に適時打を積み重ねて逆転した打線の粘り強さを褒めていた。また、近本、マルテ、岩田と投打のヒーローの名前を挙げてほめていたが、昨今、「演出方法」を少し変えたようである。
「大腸ガンの手術を終え帰って来た原口をいきなり代打起用しました。その原口が適時二塁打を放ち、果敢に頭から二塁ベースに突っ込んでいく姿を見せられたら、ベンチが盛り上がるのも当然です」(在阪記者)
この起用法は、岡田彰布氏のもとで学んだという。岡田元監督は選手の誕生日をすべて覚えていて、そうしたタイミングで選手を一軍に昇格させるなどしてきた。岡田監督時代を選手として経験していた当時の矢野監督は「バカバカしいが、岡田監督は真剣だった。人をドラマティックに使おうとする」と一目を置いていた。原口の代打起用は岡田采配を「模倣」したのである。
また、矢野監督といえば、選手が適時打を放つとベンチで大げさに喜んでみせ、ベンチを明るくしようとも努めてきた。しかし、
「6月15日のオリックス戦で大山が覇気のない走塁をし、試合後、取材陣に囲まれると名指しで非難していました。味方野手がどんなにエラーをしても『次に期待する』としか言わなかった矢野監督が、です。これまでの方針を撤回して個人名を出したのはちょっと驚きでした」(前出・在阪記者)
20日の東北楽天戦でも、名指しで選手を叱っていた。本塁突入が可能だった場面で、三塁走者・木浪がためらってしまった。矢野監督は懲罰的な意味合いで、即刻、代走を送った。
「単に叱ったり、怒ったりするのではなく、インパクトに残るような言動に努めています。怒ったら、前政権同様、選手を萎縮させるだけ。反省、発奮につながる方法を模索しているようです」(球界関係者)
それにしても、阪神は12球団最多の失策数に象徴されるように、凡ミスが多い。岡田采配の「模倣」など、矢野監督なりにいろいろと考えているようだが、こんなに気を遣っていたら、ストレスで胃に穴が空いてしまうのではないだろうか。
(スポーツライター・飯山満)