ある日突然、片方の耳が聞こえにくくなる──こんな症状が出たら放置せずに、すぐに耳鼻科を受診してほしい。なぜなら、「突発性難聴」の可能性があるから。この病気は、早期発見・早期治療が何より重要だ。
「突発性難聴」とは、音を脳に伝える感音器に異常が起こる「感音難聴」の一種と考えられているが、原因ははっきりしない。ストレスや過労、睡眠不足、生活習慣病による血流障害などが誘因と考えられている。
症状としては突然の難聴のほか、耳鳴りや耳が詰まった違和感、同時にめまいを感じる人も多い。発症から1週間以内、遅くとも2週間以内であれば、治療で改善する可能性は高い。しかし、それ以上の時間がたってしまったら、残念ながら聴力の改善が難しくなる。
治療は基本的に、ステロイドの点滴。症状に応じて、抗ウイルス薬や内耳の循環改善薬などが組み合わされる場合もある。
加齢が原因の「加齢性難聴」という病気もある。音の振動を電気信号に変換する「有毛細胞」が、加齢とともに徐々に壊れることで症状が現れる。
誰でも聴力低下は30代から始まっている。最初は「モスキート音(17キロヘルツ前後の高周波音)」が聴こえなくなり、高い音から除々に聴き取りにくくなっていく。60~70代ともなると個人差はあるが、会話域(約250ヘルツから2000ヘルツ)の音が聴こえにくくなる。
加齢性難聴は若い頃からの耳の使い方の影響も大きい。対策としては長時間の騒音の刺激から耳を守ること。例えば音楽を大音量で長時間聴く、パチンコ店などに長時間滞在することは耳にとって負担が大きい。
また、耳の血管は非常に細いため、高血圧などの生活習慣病の人も注意が必要だ。難聴の放置厳禁。早めに医師の受診をおすすめしたい。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。