アメリカの調査結果は、日本にも当てはまるのか。飯田橋中村クリニックの院長である中村剛医師が解説する。
「自転車に乗ったことが原因で、当院に来られる患者さんはいます。いちばん多いのは、前立腺が慢性的な炎症を起こす症状です。前立腺は膀胱の下のところにあるのですが、スポーツタイプのサドルのものなんかに乗ると強く圧迫されて、それが慢性の前立腺炎の原因になるのです。それと同時に、骨盤の下にある骨盤底筋が損傷を受けます。勃起というのは、ペニスの中の動脈に血流がたまる現象ですが、骨盤底筋が勃起を維持するために筋肉を締めて血液が出て行かないようにしているわけです。自転車はこの筋肉をいつも痛めつけているわけですから、結果的にEDになるという可能性はあると思いますね」
「日本性機能学会」が昨年発行した「ED診療ガイドライン」には、EDを起こす一要因として「自転車には注意」が必要であり、乗車時間とEDの間には明らかに相関関係がある、と明記されている。
「前立腺の慢性的な炎症で来院される患者さんで、自転車に乗られる方は結構多いです。自転車が趣味で、100万円くらいの自転車を買って大好きで乗っているというタイプの人に症状が出ることが多いですね」(前出・中村医師)
来院する人たちを問診すると、やはりサドルの形状に大きな原因があるということがわかったという。
「前立腺・尿道の痛みを訴えて来る患者さんに尋ねると、傾向がわかります。スポーツタイプの自転車に1日2時間ほど乗っている方が多く、症状も重い傾向があります。そのタイプを通勤に使用している人は、慢性の前立腺炎になる確率は非常に高いです。やはりサドルの形状が問題だと考えています。骨盤底筋が決定的なダメージを受けると、筋断裂を起こし、尿失禁をします。自転車に乗りすぎて尿失禁を起こす方はそこに行く前に、前立腺が痛くなって来院する方が多いですね」(前出・中村医師)
前立腺炎は勃起障害に直結するものではないのだが、勃起に関わる部分が破壊されるほどのダメージが与えられているシグナルと言えよう。前出・泌尿器科専門医の発言は、さらに衝撃的なものだ。
「06年のことです。海外の専門誌『性科学ジャーナル』に『女性の自転車愛好家は不感症になりやすい』という論文が発表されました。女性器に体重が集中して性器周辺の神経系や血管が圧迫されることにより、感度が落ちるというものでした」
はたして自転車はセックスの“敵”なのか──。