「最近、イライラするし、疲れやすくなった」「ほてりや汗がひどい」‥‥。同僚の男性がこうした症状を訴えた時、あなたは「男性でも更年期障害?」とからかったりしていないだろうか。それは完全な誤解である。
更年期障害が女性特有の悩みとされたのは昔のこと。最近では、男性にも更年期障害が起こりうることは広く知られている。
一般的に女性の場合は、閉経前後約5年を「更年期」といい、その期間に起こるさまざまな不快症状を「更年期障害」と呼ぶ。男性の場合は男性ホルモンのテストステロンが加齢に伴って低下することが原因なので、発症時期は40代以降から70代くらいまでと、個人差が大きいのが特徴。働き盛りに多く、女性よりも長期間にわたるため、意外に深刻なのだ。
男性の更年期障害では、性欲の低下やED(勃起障害)、イライラや不安、不眠、疲労感、記憶力の低下や意欲低下などといった「うつ」に似た症状が起こる。また、ほてりや発汗、関節痛などの症状が出るほか、頻尿になることもある。
男性ホルモンには肥満を抑える作用があるため、これが低下すると太りやすくなる。そのため、肥満に多い高血圧や高血糖、高脂血症などのリスクも上がる傾向にある。
予防には、男性ホルモンの低下を防ぐために生活習慣の見直しが必要だ。適度な運動をして筋肉に刺激を与えることで、男性ホルモンの分泌が促進される。また、睡眠時に男性ホルモンが分泌されるため、しっかりと睡眠時間を確保することも大切だ。
だるさや疲れやすさ、気力低下などを緩和する漢方薬「補中益気湯」を使用するのも有効だろう。
男性更年期の症状が疑われたら、一般的には泌尿器科だが、最近は男性更年期外来やメンズヘルス外来などもあるので、そちらを受診してみるのもよい。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。