長嶋茂雄と松井秀喜の“師弟コンビ”が国民栄誉賞を同時受賞したばかりのプロ野球界だが、最強の名コンビは? スポーツジャーナリストの二宮清純氏にベスト5をあげてもらった。
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1位は王貞治と長嶋茂雄のON。やはりこの2人にかなうコンビはいないでしょうね。記録に残るホームランの王、記憶に残る勝負強さの長嶋、2人のうちどちらがいなくてもV9は達成できなかったでしょう。
現役時代にONと戦った江夏豊さんに以前「対戦した中で最強のバッターは誰ですか?」と聞いたことがあるんです。すると即答で「ONです」と返事が返ってきた。なぜ2人を一緒にあげるのか聞くと「OもNも1人なら何とかなるが2人となるとそうはいかない。やっと1人抑えたと思っても、もう1人すごい打者が出てくるわけだから。ONをピッチャー1人で抑えるのはキツい。だから、最強バッターはOでもNでもなく、ONなんだ」と語ってくれたのが、とても印象に残っています。
2位は桑田真澄、清原和博のKKコンビ。高校1年生の時から甲子園のスターで、巨人入りを熱望した清原でしたが西武にドラフト指名され、巨人に入団したのは桑田だった。日本シリーズではピッチャー桑田とバッター清原が対戦し、西武が巨人を倒して優勝する直前、ファーストを守る清原が感極まって涙を流した。その後、清原がFAで巨人に入団して、桑田と再びチームメイトに‥‥と高校時代から連綿とドラマが続いていくわけです。できることなら将来、監督として、また新たなドラマを作ってほしいものです。
3位は、広島カープの山本浩二、衣笠祥雄コンビ。1975年に地方の弱小球団だったカープを初優勝に導き、その後、黄金時代を築いた原動力は、間違いなくこのコンビでしょう。
よく、衣笠の連続試合出場記録がクローズアップされますが、実は山本も当時、プロ野球歴代5位となる(現在は11位)872試合連続試合出場を記録しています。本人は「衣笠が出ているのだから自分も休めない」というライバル意識があったからだと語っていました。互いが互いを高め合う名コンビでした。
同じく、ライバル関係にあった名コンビとして4位にあげておきたいのが、ジャイアンツの江川卓と西本聖のコンビ。ドラフト外で入団した西本が、努力してやっと先発投手の座をつかんだところに入団してきたのが怪物・江川でした。絵に描いたような雑草とエリートというライバル物語がスタートするわけですね。
現役時代、江川が投げている時に本気で「打たれろ!」と思った西本。そしてクールに見えるが、今でも現役時代に西本が受賞して、自分が受賞できなかった沢村賞のことで、心の中の整理がついていないという江川。これも“空白の一日”の副作用なんでしょうね。
5位は、仰木彬監督と野茂英雄、そしてイチローとの師弟コンビ。日本人がメジャーに行く道筋をつけた野茂と、メジャーリーグで最も成功した日本人プレーヤー、イチロー。今のメジャーリーグブームの基礎を作った2人を育てたのが仰木監督でした。
明治~大正期に活躍した政治家の後藤新平の言葉に「金を残す人生は下。事業を残す人生は中。人を残す人生は上」という言葉がありますが、仰木監督はまさに人を残した名監督。プロに入った頃、野茂はトルネード投法、イチローは振り子打法と、ともに個性的なフォームで、コーチの中には「基本ができていない」と否定的に捉える向きが少なくなかった。もし、選手の才能を認めて長所を伸ばすのが上手な仰木さんと出会っていなければ、2人のその後はなかったでしょう。
今後は、阪神の藤浪晋太郎と、北海道日本ハムの大谷翔平。この2人の絡みに注目したいですね。