安倍政権発足後、小泉訪朝に同行した経験から内閣官房参与に就任した飯島氏は、朝鮮総連の許宗萬責任議長と数十回に及ぶ会談を行うなど、精力的に活動を開始。前出・五味氏が、
「横田さん夫妻は『今年中に動きを見せてください』と安倍総理に申し入れ、総理は『わかりました』と答えています」
と言うように、安倍総理も今年3月末のモンゴル訪問時には北朝鮮の密使と接触したとされる。政府関係者が声を潜めて語る。
「拉致問題解決に関し、安倍総理は密使に『日本は自民党・金丸信副総裁が90年に訪朝した際、5兆円の戦後補償金を支払う約束をしたが頓挫した。それを実行する』と伝えたといいます。現在の価値でいうと約10兆円でしょうか」
貧困にあえぐ北朝鮮は今、喉から手が出るほど金が欲しい。10兆円はもちろん「拉致問題解決の手打ち金」の色が濃いが、
「北朝鮮が最大にして最後のカードと考えているのがめぐみさん」(前出・北氏)
彼女の「帰国」には依然として高い壁が立ちはだかる。
では劇的に変わる可能性の乏しい北朝鮮の意向をくみつつ、現実的にどうすればいいか。北氏はさらに衝撃の「裏工作」を明かす。
「横田さん夫妻とめぐみさん本人をウランバートルで超極秘裡に面会させる。ただし、あくまでめぐみさんは亡くなったことにしなければならず、そのまま帰国はしない。横田さん夫妻もこの件は口外できない──。これが北朝鮮の意向であり、日本側に持ちかけられた提案だったのです」
もちろん日本がこの提案を飲んだ、あるいは横田さん夫妻に伝えられた、との話は聞こえてこない。北氏によれば、
「めぐみさんは平壌に非常に近い“聖なる場所”にいるとのこと。特異な霊能力者、あるいは高位の宗教者としてあがめられている、との情報もあります」
前出・五味氏が「解決」の展望を語る。
「1カ月ほど前に在日モンゴル大使に会った際、『モンゴルは日本の援助のおかげで発展してきた。我々は日本と一緒に拉致問題を何とかしたい。日本のお手伝いをしたい』と話していました。古屋氏も『日本に好意的な国と協力して解決したい』と発言している」
実はわずかな糸口が一つだけ残されている。鍵となるのは金正日総書記の妹、金敬姫(キム・ギョンヒ)氏であり、「拉致問題は私が責任を持って解決します」と口にしているとされる。
「彼女は北朝鮮の国家存亡の危機脱出を(戦後補償金獲得とその後の援助を引き出す)日朝国交回復に賭けている、と考えられます。未確認情報ですが、昨年末に、肝臓障害による体調不良をおして極秘来日したとも‥‥」(前出・北氏)
金正恩第一書記は北朝鮮に関する日本の新聞、雑誌報道を翻訳して読み、関心を持っているという。近い将来、大量の帰国者とともに「最後のカード」が切られる日が来ることを願いたい。