北海道日本ハムファイターズの中田翔が「伝説のバット」を発注していた。メジャーリーグの伝説の安打製造機、ピート・ローズと同じ形態のバットで2020年シーズンに臨む。
契約メーカーのミズノ社が伝えたところでは、グリップエンドがなく、本当にすりこぎ棒のような形態。通常、先輩たちが特注した形態を後に踏襲する選手はたくさんいた。しかし、このバットだけはクセが強すぎて、誰も後に続いて使っていない。そのクセとは、グリップエンドの形態だけではないのだ。
「バットの“表”と“裏”が反対なんです」
関係者の一人がそう言う。ミズノ社はイチローのバットも製造したので、日米の安打製造機をサポートしてきた。松井秀喜など多くの有名スラッガーたちも支えてきた。したがって、バットサンプルも大量にあるわけだが、ピート・ローズのものだけは誰も使おうとしなかった。
その敬遠されてきた理由は、先の関係者が言う「表と裏」にある。バットにはボールに当たる面とそうでない面があって、前者を「表」という言い方がされている。
「ボールの当たるほうの面は柔らかく、当たらない法は硬くなっています。柔らかい面が前のほう、表になることでバットに“しなり”も生まれるんですが、ピート・ローズは反対でした。硬い面のほうを表にしてくれ、と」(前出・関係者)
表と裏が反対になることで、ボールに当てた瞬間、独特の感覚が生じる。また、バットにしなりが生じにくいため、人一倍、パワーを必要とする。ここから先はアスリートの感性になるが、その硬いバットにしなりを作るため、グリップエンドも独特な形態になったのだという。本当に、クセの強いバットなのだ。このバットを試した瞬間、中田は好感触を得たそうだ。
「単にグリップエンドの形態がフィットしたからではありません。硬いバットによる軌道などもチェックしていました。中田は力を入れすぎて失敗することが多いので、力を入れた状態で常に打てるバットと感じたのでは」(前出・関係者)
2020年は一塁、指名打者のスタメンを清宮幸太郎と争う。まだ覚醒していない後輩だが、猛追ぶりは感じているはず。新スタイルのバットを選んだのも、中田の4番の座は渡さないとする不退転の決意の表れだろう。
(スポーツライター・飯山満)