野天風呂や混浴の醍醐味といえば、心身の開放感。生まれたままの姿で性的欲望も開放した美女優たちの艶っぽい「湯けむり金字塔作品」を、映画パーソナリティのコトブキツカサ氏が解説する。氏によれば、「水戸黄門」(TBS系)の由美かおるのシーンも揺るぎない支持を得ていますが、男性には誰しも、『無防備な状態の女性を、どうにかしたい!』という願望が根づいていると思うんですよ。だからこそ、風呂での情欲シーンは、通常以上に艶っぽさを感じるところがあります」
そう解説するコトブキ氏が「温泉旅行という非日常感や特別感を、うまく使った」と評するのは、不貞愛映画の頂点「失楽園」(97年、東映)だ。
役所広司演じる中年会社員と黒木瞳(59)演じる人妻が、肉欲に堕ちてゆく。温泉シーンは物語終盤で、心中を決意したふたりが、湯けむり立ち込める温泉宿の混浴で濃厚に絡み合う。役所は黒木のはかなげな体を抱き寄せ、バストを唇でなぞる。すると黒木は、喜悦の表情を浮かべるのだ。
「宝塚娘役スターの黒木が、こんなにも生々しく肌を出してくれるなんて、とても驚きましたね。あの線の細い体からにじみ出る品のよさが、艶っぽさをより引き立てていました」
黒木は他にも「略奪愛」(91年、東映)で、古尾谷雅人と浴室での座って密着する体勢での交わりシーンを見せている。泡にまみれた絹のような柔肌が、なんともなまめかしいのだ。
黒木同様の「ギャップの艶っぽさを感じた」のが、「座頭市」(89年、松竹)での樋口可南子(61)。夜更けに湯につかる盲目の市(勝新太郎)のもとへ、背中一面に入れ墨を入れた樋口も入湯。そして、樋口から勝を抱きしめると、勝も欲情。勝が樋口の全身に唇をはわせると、小ぶりな胸に実ったバストトップが硬くなり、体をのけぞらせ絶頂するのだった。
一部で「ホンバン?」と噂されたほどの迫力を、コトブキ氏が振り返る。
「このシーンは今でも鮮烈に覚えているほど、いやらしかったですね。手の届かない存在の樋口も、こんなふうに感じるんだとギャップに燃えました」
強烈なインパクトを放つのは、「復讐するは我にあり」(79年、松竹)で、三國連太郎演じる夫の父親と岩風呂で一線を越えんとした倍賞美津子(73)。夫のいぬ間に、お風呂に入っている義父のもとへ「背中、流しましょうか」と一糸まとわぬ姿ででやってきた倍賞。戸惑う三國だが、しだいに互いの欲望が絡み合い、湯につかる倍賞のたわわなバストを後ろからわしづかみにして、ゆっくりと揉みしだく。そのたびに鳴るパシャ‥‥ビチャ‥‥という湯の音が、倍賞の濡れた秘部とリンクするようなシーンだ。
「僕は幼少期にこの倍賞を見て『怖い!』と思いました。現代は女性の性的欲求は当たり前に語られていますが、当時そうしたことは秘められたこと。ですが倍賞は自身の欲望を全身に漂わせ、三國を誘った。まるで獲物を仕留める獣のようでしたね」
そんな中、コトブキ氏が「最も湯けむりが似合う裸体」と評するのが、「でべそDEストリップ」(96年、ビジョンスギモト)の川上麻衣子(53)だ。片岡鶴太郎と岩風呂で混浴し、ねっとりとした口戯をしたのち、対面して座わった体勢で体を重ねる。
「彼女の魅力は、ふくよかで柔らかさを感じるカラダと胸。母性的で、優しく包み込んでくれる質感が画面から伝わり、温泉の癒やし効果のプラスアルファになっていたのではないでしょうか」
湯けむりには、男女の欲望がまったりと溶け込んでいるのだ。