アメリカでもヒトからヒトへの感染が確認された新型コロナウイルスに関して、米疾病予防管理センター(CDC)では2月7日、「マスクの着用を推奨しない」とあらためて注意を喚起した。
CDCでは以前から呼吸器系の疾患ではマスクの着用を推奨しておらず、今回の新型肺炎に際しても同様にマスクを推奨しないと明言。しかし全米の大手ドラッグストアではマスクや消毒液が入手しづらい状況となっており、アメリカ国民はCDCの勧告を無視している状況だ。
そのアメリカではインフルエンザの死者数がすでに1万人の大台を突破しており、マスクの需要は急速に高まっている。それでもなお、CDCがマスクを推奨しない理由はどこにあるのだろうか。
「アメリカでも日本と同様に、感染防止にはマスクよりも手洗いが効果的とアナウンスしています。しかし日本と異なるのは、マスクをすべきではない理由をもっと明確に説明していること。そのひとつは医療現場にマスクが行き渡らなくなることへの危惧で、これは日本と一緒ですが、他の理由が日本とは異なっているのです」(医療系ライター)
当局によると、一般市民はマスクの正しい着用法に通じておらず、マスクをしていてもその下に指を入れて手鼻をかむことがあるとも指摘。鼻をかむときはほぼ必ずティッシュペーパーを使う日本とは異なり、海外では手鼻をかんだりタオルを用いるケースが多く、それが感染拡大の一因になっているようだ。
そして、もうひとつの理由はいかにもアメリカらしいという。
「CDCの関係者は、マスクで顔を隠すことによりセキュリティ上の問題が発生すると警告しています。要するに公衆の面前で顔を隠す行為は、みずからを危険人物だと公言しているのと一緒だということです。日本でも犯罪者がマスクで顔を隠すケースが多いとはいえ、さすがに『マスク=犯罪者』とまでは認識されていません。しかしアメリカでは人前で顔を隠すことなどありえない、ということ。それを公衆衛生の責任者が口にするあたり、日本よりもはるかに治安が悪い現状を追認しているとも言えるでしょう」(前出・医療系ライター)
そのアメリカでは実際、医療関係者ですらめったにマスクをしないというのである。医療系ライターが続ける。
「インフルエンザ患者が激増している現在でさえ、病院側が医療従事者にマスク着用を義務付けようとすると《個人の自由だ!》として反対されるお国柄ですからね。ちなみにアメリカではマスクのことを『フェイスマスク』と表現します。日本ではフェイスマスクと言えば顔全体を覆うものを意味しますが、アメリカでは普通のマスクでも十分に顔全体を覆っているという認識なのです。そして医療現場でもマスクをするのは手術中か、もしくは感染症患者の病室に入る時くらいのもの。病室を出たとたんに『ああ苦しかった』といってマスクを外すのは普通の光景です」
そんな文化にもかかわらず、マスクの需要が急増しているという現在、アメリカでも“感染を予防するためのマスク”という意識は高まるのだろうか。
(金田麻有)