新型コロナウイルスが世界中に感染を広げる中、同じ先進国でも欧米に比べて日本での感染例が極めて少ないことに注目が集まっている。特に差が大きいのは死亡者数で、感染者数については日本が意図的にPCR検査を抑えているとの批判が根強いものの、死亡者数は隠しようがないものだ。
その死亡者数は4月1日までに、イタリアで1万2000人超、スペインが8000人超、フランスでも3500人を突破。感染者数が中国を抜いて世界最多となったアメリカでは4000人超えといずれも4桁となっているのに対し、日本国内の死亡者数は2桁も少ない50人台だ。こうした状況について3月26日付のニューヨーク・タイムズ紙では、世界中の疫学者が当惑していると伝えている。
「その理由として、日本の衛生状態の良さをあげる人は少なくありません。確かに日本ではふだんから手を洗ったりうがいをする人が多く、学校教育で指導していることもあり、国民全体に衛生意識が行き渡っています。対して欧米ではトイレを出ても手を洗わない人は多いです。土足文化ゆえに室内に侵入する病原菌の数も段違いですし、欧米のドラマを見ていれば、そもそも服や体が汚れることに対する抵抗感が低い感じも伝わってますね」(海外事情に詳しいライター)
日本人の目から見ると欧米の生活環境はかなり不潔に思えるようだ。そしてどこよりも清潔さを求められる病院でさえ、日本の病院と比べると「不衛生」だと、このライターは証言するのだ。
「日本の病院ではスタッフがマスクをつけているのは当たり前ですが、私の知る欧米の病院では病院であってもマスクをつけるのは、手術中の医師や看護師、そして感染病棟の病室に入るスタッフだけです。何しろ新型コロナウイルスが流行り始めた当初には、アメリカの病院でスタッフにマスク着用を義務付けようとしたところ、“個人の自由”を理由に猛反対されたというエピソードもあったほど。また、日本なら退院患者が出るたびに病室の内部を徹底的に清掃、消毒しますが、私の知っているアメリカの病院では、せいぜいシーツを取り換えるだけで、ドアノブやナースコールのボタンなどを念入りに消毒することはないそうです。こうした病院が多ければ、感染が広がりやすい状況にあると言われてもしかたないでしょう」
そんな環境ゆえか、欧米の病院では日本では耳慣れない症状に苦しむ患者が少なくないという。
「欧米のプロスポーツでは、骨折などで手術した選手が術後になんらかの感染症にかかり、さらに苦しむというケースも珍しくないと聞いています。この原因としては、入院中の病室や看護師の衛生状態が良くないことから、手術後の傷口からばい菌が入り込んだ可能性も指摘されています。この手の感染症は日本ではめったに聞かない症例であり、病院でさえ衛生状態が大きく異なる実情を物語っているのではないでしょうか」(スポーツライター)
日本の病院ではどのように衛生状態を保っているのか。その情報を世界中で共有するだけで、新型コロナウイルスへの対策になるのかもしれない。
(金田麻有)