バラエティ番組やグラビアで活躍中の「破天荒アイドル」谷桃子(28)が、「なりすまし詐欺」の被害にあっていた。「私と同じ被害者を出さないために」と本誌のインタビューに答えてくれた。「偽マネジャー」が周到に用意した“罠”の決定的瞬間とは‥‥。
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3月4日、谷はデパートで買い物をしようと有楽町に立ち寄った。午後8時頃、その途中の路上で男がこう話しかけてきたのだ。
「もう芸能界の仕事をされていますよね?」
スカウトマンのような口ぶりに、谷は丁重に「すいません。もう事務所に入っていますので」と答えた。
すると、男は間髪いれずに話しかけてきた。
「もしかしたら谷桃子さんですか?」
さすがに、谷も認めるしかなかった。男は立て板に水で話を続けた。
「わかっていたら、最初から声をかけませんでした。すいません、失礼しました。じゃあ、うちのバナナマンとも仕事をご一緒させていただいていますね」
しかし、谷の警戒心を男は見て取ったのか。言葉巧みに谷に迫ったという。
その様子を谷が話す。
「私が出ている番組の内容を事細かに知っていて、『あの時出ていた番組のアレは結局、最後はどうなったの?』とか『あそこの笑いはおもしろかったですね』とか、とにかく詳しいんです。意外と爽やかな感じで、芸能事務所のマネジャーにも見えなくもなくて‥‥」
しかも、この男の話には、芸能関係者以外には知りえない話題も含まれていた。それでも、谷は念のため名刺をもらおうとした。
「『会社のセキュリティが厳しいので、オフに持ち歩けない』と言うんです。そんな厳しい事務所もあるんだなって思いました」
男が話しかけてきた目的もよくわからず、谷は正直に衣装を買いに来たことを告げ、「このへんで」と会話を切り上げようとした。
「それでも、『妻と子供を迎えに行くので、途中まで‥‥』と言って、デパートまでついて来てしまったんです。同じ業界の方で、本当にお世話になっているタレントさんのマネジャーさんだったらと思うと、『ついてこないでください』と邪険にはできません」
男は「まだ妻が来ない」と店内まで谷を追ってきた。時間もなかった谷はショップで衣装を選び始めた。
「気に入ったお洋服を見つけて鏡の前で合わせるため、バッグを手から離すじゃないですか。棚の上にポンって置いたら、ショップの外にいた犯人の男性が近寄ってきて、『置き引きにあうから危ないよ』と私に声をかけたんです」
ちょうど店員に「試着室へどうぞ」と言われたタイミングだった。男はバッグを預かり、谷も数分ならと油断が生まれてしまった。
試着室から出ると、男はいなくなっていた。店員に「トイレに行く。戻ってくる」と言い残したまま──。
「現金6万円入りの財布や自宅の鍵、手帳などが入っていました。いつもは、そんな大金を持ち歩かないのですが、その日は公共料金代と衣装代、両親のプレゼントに血圧計を買おうと思っていて‥‥。ショックでした。鍵を取り替えたりしたので、被害総額は10万円ぐらいになります」
5月8日、犯人は逮捕された。大相撲の不知火親方(元関脇・青葉城)の長男(31)だった。「なりすまし詐欺」の常習犯で、スカウトになりすますなどして30件以上の余罪があるという。
しかも、犯人の自宅からは、谷のバッグに入っていた献血カード、テレホンカード2枚、MCを務める競馬中継番組を放送する「BS11」の入館証などが見つかっている。証拠となりうる品を保管していたことから、犯人は谷のファンであった可能性もある。
「私は、警戒心は日頃からすごく強く持っているほうなんですよ。『自分は騙されない!』と思っていると隙が生まれるんですね。街を歩いていても、ちょっと声をかけられるだけでビクッとするんです。ファンの方かもしれないので、そんな行動を取りたくないんですけど、いまだにビクッとしてしまいますね」
受けてしまった心の痛手は10万円どころではない。