いつでもどこでも情報に触れられる「ユビキタス」なる時代が到来している。そのせいか、「ネット詐欺」が急増中だ。最近は芸能人を騙ったメールで有料サイトへと導き、法外な料金を請求する事件が多発。その騙しの手口とは‥‥。
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警視庁は6月13日までに、出会い系サイト「ライン」の運営会社元役員やアルバイトの男女計9人を詐欺の疑いで逮捕した。約37万人の顧客名簿を持ち、10年からの2年間で約116億円を売り上げたという。
この事件が大きく報じられたのは、その手口がためである。元AKB48の前田敦子(21)ら芸能人を騙り「聞いてもらいたいお話があります」とメールを送りつけていたのだ。
以前、お笑い芸人の「はんにゃ」金田哲(27)が、AKB48の篠田麻里子(27)を騙るメールに騙されたと告白していた。芸能人ならまだしも、一般人にそんなメールが届くわけがないと思うのが常識だが‥‥。
「私にも『優子です』とAKB48の大島優子(24)の名前でメールが来ました」
こう苦笑するのは、ITジャーナリストの井上トシユキ氏。こう続ける。
「もちろん無視しましたが、ここからやり取りを始めると、2回目か3回目のメールで『自分のスマホとか使っていると事務所にバレるから、サイトのほうに来てほしい。こっちだったら足がつかない。チャットもできるから』と有料サイトに誘導するのです」
もともと、こうしたネット詐欺の被害者は女性が多いと言われてきた。
「数年前にはSNS(mixiやFacebookなど)上で、外国人から『友達になりたい』と言われて詐欺にあう日本人女性がいっぱいいたんですよ。『日本に行きたい。とりあえず往復の飛行機代50万円ほど貸してほしい』と言われて、現金を振り込んだりしている。『会ってもいないのに‥‥』と思いますが、女性特有の心理をくすぐるんでしょうか」(前出・井上氏)
実際に、冒頭に紹介した116億円のうち、被害者の6割は女性だという。
芸能記者が言う。
「芸能人なりすましメールが出現し始めた頃は、『嵐』の松潤とか『EXILE』のATSUSHIの名前を使われることが多かった。それで、女性を狙って簡単に騙せたので、男性もイケるのでは、と詐欺グループの連中は考えたようです」
本誌も被害者を取材すると、女性が圧倒的に多かった。ある被害女性は〈福山ノ雅治〉と名乗るメールがきっかけだった。
「最初はまさかウソでしょうと思い無視していたのですが、興味本位で開いて、読んでいるうちに、もしかして本物かもと思うようになり信じてしまった。さらに、有料サイトに進み、予知能力者と称する人物から〈福山ノ雅治に危険が迫っているから協力してほしい〉というメールが入ってきた頃には、すっかり洗脳状態でした」
男性は「そんなバカな」と笑ってしまうかもしれないが、最近はそうも言っていられない事態がネットでは進行している。本誌は某ネットオークションで、こんな商品を発見したのだ。
そのタイトルには〈AKB48渡辺麻友着用 直筆サイン入り水着♪本物〉とあり、マジックでサインが書かれたビキニの上下の写真を掲載。しかも、出品者から〈信頼できる芸能関係者から譲ってもらいました。クリーニングしてないみたいなのでご理解ある方のみ〉と、マニアの心をくすぐるメッセージまで‥‥。グラビア誌編集者が言う。
「特に、AKB48のメンバーが撮影で着用した衣装は厳重な管理がされています。編集者やカメラマンだって手に触れることさえないのに、外部に流出することはありえないです」
まゆゆの水着は1円から始まった落札額が数時間で5万円を超えた。悪質な詐欺と言えるだろう。
「04年のブログブームの時も詐欺被害が増えた。今回は07年以降のスマートフォンブームで新しくネットを使うようになった人が増えたことが一因ではないでしょうか」
こうした「なりすまし」には要注意だが、名前を騙られる有名人が最大の被害者なのは間違いない。