世間を騒がせる詐欺事件が起こると必ずと言っていいほど話題になるのが、有名人の「広告塔」の問題だ。「実情を知らなかった」とわびる者いれば、ダンマリを決め込む者あり‥‥。「本当は詐欺の片棒を担いだんじゃないのか?」。そんな疑問を本誌が一発解決する。
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頭を抱えたくなるのが、我が国は政治家までが詐欺ビジネスの広告塔の役割を買って出てしまう現実だ。
2月18日、4000億円もの巨額の負債を抱えて破綻した「安愚楽牧場」を巡り、同社に出資していた出資者30人が、民主党の海江田万里代表(64)に対し6億1000万円の損害賠償訴訟を起こしたのだ。
同社が展開したのは「和牛預託商法」と呼ばれるビジネスだ。全国の投資家から出資金を募り、和牛を繁殖。生まれた子牛の売却利益から配当をリターンするというもの。だが、実際は集めた出資金を配当に回すという自転車操業だった。
いいかげんな商売を「知る人ぞ知る高利回り」「リスクはゼロ」と、政界進出以前の経済評論家時代に海江田氏は盛んに推奨していた。
会見した出資者の一人は、「海江田さんが太鼓判を押していたのがきっかけだった。時間が経過したから責任を持たないのは容認できない」と怒りをあらわにした。
被害者弁護団の1人の弁護士もこう話す。
「海江田氏は広告塔のレベルではない。芸能人は名前を売るのも仕事ですから、利用されてしまうこともありますが、彼は経済評論家という立場で推奨までしているんですから加害者です。しかも、『ギャラをもらっていなかった』と主張していますが、お金をもらわずに推奨したというなら、なおさらタチが悪い」
都議選で大敗を喫し、党内から退場を迫られる海江田氏だが、本誌も「レッドカード」を掲げたい。
数多くの芸能人が広告塔となったことで記憶に新しいところでは、07年の「円天詐欺」がある。
取材したジャーナリストが語る。
「疑似通貨発行を名目としたマルチ商法で摘発された事件でしたが、小林旭(74)、研ナオコ(59)、島倉千代子(75)など、多数の芸能人が会社主催のイベントで広告塔となりました。中でも細川たかし(63)の関与は悪質性が高かった。1回のギャラは破格の1200万で、50回以上出演。さらには、他の演歌歌手を紹介しては出演料の一部をピンハネしていたというのですから、利用されていたというよりは進んで協力していたと言っていいでしょう」
細川も元会員たちから訴訟を起こされた。やはり、「アウト」だろう。
昨年末の発覚以来、多くの芸能人を活動休止に追い込んだ「ペニオク詐欺」。ネットオークションのペニーオークションで購入してもいない商品を破格の安値で落札したとして、ブログで宣伝。ステルスマーケティングと呼ばれる宣伝方法だったが、このペニオク自体がインチキ。当局に摘発されて、芸能人たちの“広告塔バイト”が問題視された。
ほしのあき(36)や松金ようこ(31)らグラドルに始まり、お笑いコンビ「ピース」の綾部祐二(35)までもが謝罪した。
芸能記者が言う。
「ペニオク詐欺に関わった芸能人はみんな5万~30万円という少額のギャラしか受け取っておらず、ほとんどが事務所を通さないバイトでした。それだけに、全員がすぐに謝罪しました。松金はバイトを斡旋していたクチで罪は重いかもしれませんが、斡旋されたほしのが、他の面々が活動再開しているのに、いまだ活動休止中で、ちょっとかわいそうですね」
社会的制裁は十分と見なし、ほしのは「セーフ」と認定したいところだ。
だが、芸能評論家の肥留間正明氏はこう嘆く。
「昔の芸能人は金があったから、事業を興して失敗したとか、やれ詐欺だとか、そういうこともあったが、最近は派手な話は聞かなくなった。今の芸能界は事務所ばかりが強くてタレントはサラリーマンみたい。だから、小遣い稼ぎをして、ペニオクの広告塔なんかに引っ掛かる。残念ながら、現在の芸能界を象徴するような騒動で、これからもなくならないでしょう」
芸能ゴシップが増えるのは結構だが、たまには豪傑が現れてほしいものだ。