3年前、リーグ3位から日本シリーズ制覇まで駆け上がった千葉ロッテ。「史上最大の下克上」と呼ばれたこの番狂わせは、いかにして成し遂げられたのか。監督としてチームを率いていた西村徳文氏に話を聞いた。
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「ここ数年のパ・リーグは新監督のチームが優勝することが多いんですよ。今年のロッテも伊東勤新監督でここまで首位。期待できるかもしれませんよ」
解説者1年生として古巣ロッテの戦いぶりをそう評する西村氏自身、下克上を果たした10年も監督就任1年目だった。
「前年まで12年間コーチを務めていたのでチーム事情はある程度、把握していました。しかし、就任1年目からあんな濃いシーズンになるとは、さすがに予想できませんでした」
出足は好調だった。4月までは19勝12敗でリーグ首位。ところが6、7月と連続で負け越し、前半戦を首位から2ゲーム差の3位で折り返した。
後半戦は8月に一時首位を奪うも、大事な9月上旬に負けが込む結果に。優勝どころか、猛追する日本ハムに追い抜かれクライマックスシリーズ(以下CS)進出も危うくなった。
「監督として最も気をつけたのは、チームの調子が悪い時、ふだんどおりの表情で周囲に接することでした。監督がイライラを表情に出すとチームにすぐ伝播する。雰囲気がますます悪くなるんです」
そんな西村氏も8月上旬の7連敗中には、一度だけ感情をあらわにした。
「(10年8月5日の)楽天戦で審判の判定に抗議して退場処分になったんです。やっぱり、どこかでストレスがたまっていたんでしょうね。ただ心のどこかに、自分が必死になっている姿を見せることでチームの士気を鼓舞したいという気持ちもありました」
チームは9対3で敗北を喫したが、結果としてこの試合が節目になった。以後、日本ハムと熾烈な3位争いを繰り広げ、一つでも負ければ4位決定となる最終3連戦で全勝。CSに滑り込む。
ポストシーズンに入ってからも勢いは止まらなかった。CS第1Sの西武戦は2試合連続逆転勝ち。第2Sのソフトバンク戦は1勝3敗からの3連勝。日本シリーズでも中日を下し、シーズン3位からの下克上は完結した。
「私の野球人生において最も印象に残るシーズンであったことは間違いありません。ただ、多くの方が称賛してくれた一方で、シーズン3位のチームが日本一になったことに疑問を呈する声も少なからずありました。だから一昨年、昨年とリーグも制し文句なしの日本一を目指したのですが、かないませんでしたね」
西村氏の指導者としての評価は高い。心残りを払拭する機会は遠からず訪れることだろう。