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掛布雅之「日本シリーズで巨人を翻弄した“縦に落ちる球”」

 今年の日本シリーズは、東北楽天ゴールデンイーグルスというチームに東北の底力、野球の底力をまざまざと見せつけられました。セ・リーグ覇者の巨人に対して真っ向勝負で7試合とももつれにもつれ、まさに死闘と呼ぶにふさわしい試合の数々。今シーズンを締めくくる頂上決戦として、すばらしい展開でした。

 その中にあって勝敗を分けたのが、巨人の誤算が数多くあったことでした。この巨人の計算の狂いこそが、楽天優勝の大きな鍵になったのです。

 その巨人の誤算の一つにあげられるのが、美馬学の存在です。

 そもそも楽天の投手陣は、絶対的エースの田中将大と若手の則本昂大という先発2本柱で形成されています。1試合目では0対2で惜しくも巨人に敗れはしたものの、先発の則本は巨人の内海以上の好投を見せていました。続く2試合目では、田中が気迫のピッチングで2対1。昨年8月からの連勝記録を30とし、大記録を更新しました。

 そして1勝1敗で迎えた3戦目。巨人は則本、田中の投げられないこの試合で1勝のリードを奪いたかったはず。しかし、その巨人の机上の計算は美馬によってもののみごとに打ち崩されてしまいました。

 これを可能にしたのは、先ほどあげた則本、田中が仕掛けたピッチングマジックです。

 1試合目の則本は、縦に落ちるスライダーを軸にして巨人打線に応戦。2試合目の田中が、これまた縦に落ちるキレのあるスプリットで巨人打線を沈黙させました。どちらもボールを低めに集めた投球で攻めたため、この時点で巨人打線は低めのボールに対する警戒心が非常に強くなっていました。星野監督は則本、田中の2人を使って、巨人ナインにとって低めのボールをトラウマにさせることに成功したのです。

 そして、ここで登場したのがダークホースである美馬。日本シリーズでの彼の投球は、縦に割れるカーブを中心に緩急をつけた、まさに“低め”を意識したピッチング。巨人打線の最も振りたくないポイントへ攻め続けました。結果として巨人打線は美馬の低めを警戒するあまり、黙って見逃してしまったのです。

 巨人の誤算はこれだけではありません。打線のつながりの悪さも目立っていました。4戦目、5戦目では3番の坂本勇人、4番の阿部慎之助というクリーンナップが大ブレーキ。前回も論じたとおり、巨人は阿部を核に置いた打線。裏を返せば、阿部が打てなければ点に結び付かない構造になっているのです。

 楽天の投手陣はこの仕組みを十分に理解し、坂本や阿部といったキーマンに対して、あえて攻めたてるような投球で打線のブツ切りに成功し、巨人のリズムを崩したのです。これほどまでの打線の淡泊ぶりは、首脳陣も計算外だったに違いありません。

 さらに、巨人は投手面での誤算もありました。それが杉内俊哉の大乱調。

 杉内といえば、ソフトバンク時代から日本シリーズ男と呼ばれるほどの力投を見せる選手。03年の阪神戦、11年の中日戦の通算防御率は0.61と折り紙つき。今シーズンは不調だったものの、こと日本シリーズに関しては原監督も活躍を熱望していたはずです。

 しかし、29日の第3戦では岡島豪郎、藤田一也、銀次という左打者たちに次々と捉えられ、ペナントレースの不調そのままにあえなく2回途中で降板。完全に攻略されてしまいました。

 加えて巨人の投手陣の強みはスコット・マシソン、山口鉄也、西村健太朗という後ろの3枚。それが日本シリーズでは、巨人が先制した試合は初戦のみ。他の6試合は、楽天に先制されています。ということは、仮に彼らが登板することがあっても、楽天には何のプレッシャーもかかりません。結局、巨人は後ろ3枚の利点を十分に発揮できぬままの敗退となってしまいました。これも巨人の大きな誤算の一つです。

 ペナントレースどおりの戦いで挑んだ巨人と、対巨人戦の作戦を練った楽天。この両者の違いが度重なる巨人の計算の狂いを生み出したのです。

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