「THE MANZAI 2012」で、みごと優勝を果たしたハマカーンの浜谷健司と神田伸一郎は、ノーマークの存在だった。前年度は審査員9名中、渡辺正行1人しか投票せず予選最下位で辛酸をなめていた。そんな逆境の中、彼らが一発逆転できた“秘策”とは──。
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──12年の「THE MANZAI」予選では、実力派の3組(テンダラー、ウーマンラッシュアワー、オジンオズボーン)を制して決勝進出しました。ネタはお互いの不満を言いながらのボケとツッコミの応酬でしたが、勝因は何だと思いますか?
浜谷「僕らはたまたま勝てただけ。運がよかっただけなんですよ」
神田「だって2位とは1票差ですもん。僕は予選を勝ち抜けるとは思ってなくて、『チャンピオンになる人のネタを生で見られる!』ってワクワクしてたから、びっくりですよ(笑)」
浜谷「ただ、もし勝機があるなら、いい意味で4組の中では浮いていたかもしれません。僕らは最初に静かなトーンで入って、後半で徐々にテンションが上がりますが、他の3組はロケットスタートで最初からガンガン笑いを取る漫才なんで‥‥」
──先日発売された処女作「下衆と女子の極み 強くなりたきゃパンを食え」(ぴあ)にも優勝までの経緯を書いていましたが、本番直前に急遽、1本目にやるネタと2本目を入れ替えたとか。
浜谷「本番10分前に神田さんが『どうせ1本しかできないから、好きなほうをやりたい』ってゴネたんです」
神田「勝てるわけがないと思ったから、思い出作りに好きなネタをやりたかったんですよね」
浜谷「つまり、僕は神田さんの思い出作りにつきあったんですよ。大事な決勝大会で(笑)」
神田「でも、番組が終わったあとにビートたけしさんが、『他の3組は決勝前のほうが出来がよかったけど、ハマカーンは予選より決勝のネタのほうがよかった』って言ってくれたじゃない。ネタの順序を逆にしたことが功を奏したのかもしれないよ」
──優勝が決まった時もアゼンとした表情でしたが‥‥。
神田「僕、3票目が入った段階で優勝が確定したわけでもないのに泣いちゃったんですよ。絶対に千鳥が優勝すると思ってたからうれしくて。で、パッと振り返ったら磁石の永沢(たかし)が号泣してて、おかしくて涙が止まりました(笑)」
浜谷「“あのメガネ2人が優勝した”って勘違いされそうな光景でしたね(笑)。僕は『超ラッキーだな』と思いました。神田さんの“女子っぽい”と言われるキャラクターをネタにしたこと、ボケとツッコミが明確じゃないスタンスに変えたこと、全てがこのラッキーな結果につながったんだな、って」
神田「僕はお笑い以外の仕事もしてみたいんですよ。優勝して本を出せたから、次は小説を書いてみたい」
浜谷「では僕は、神田さんの小説の合間にスピンオフ的な小説を書き加えますよ。去年まで月収2万なんだから取り戻さないと。神田さん1人だけ印税生活者にはさせません!」