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「平成日本シリーズ史」プロ野球史上最大の下克上を果たしたロッテ!

 今シーズンオフにオリックス・バファローズの新監督に就任した西村徳文がかつて率いた千葉ロッテマリーンズは、現在までの日本シリーズ史上において唯一の快挙を成し遂げている。

 2010年のシリーズのことだ。対戦相手はかつてロッテオリオンズ時代に同僚だった落合博満率いる中日ドラゴンズである。中日はリーグ制覇を果たし、その後のクライマックスシリーズも勝利し、堂々のセ・リーグ王者として日本シリーズに進出。かたやロッテは史上初めてペナントレース3位からパ・リーグのクライマックスシリーズを勝ち上がってきたチームだった(05年にもロッテはリーグ2位からプレーオフを勝ち抜いて日本シリーズに進出しているが、当時は最終的なプレーオフの勝利チームがパ・リーグの優勝チームと認定されていた)。

 そのためロッテは「プロ野球史上最大の下克上」を合言葉にシリーズに挑んだのである。

 ナゴヤドームで迎えた第1戦は、クライマックスシリーズを勝ち抜いた勢いを持ち込んだロッテが勝利した。2回表に大松尚逸のタイムリー二塁打でロッテが先制。その裏に和田一浩と谷繁元信にソロ本塁打を浴びて中日に逆転されたものの、3回表に清田育宏のソロと今江敏晃のタイムリーで再逆転に成功すると、その後も2点を追加。守っては先発・成瀬善久以下、5人の投手の継投で中日打線を6安打に抑えた。結果、5‐2の快勝劇であった。

 続く第2戦は中日が先手を取った。何と初回に和田のタイムリーなどで一挙4得点。2回裏にも和田の2点タイムリーなどで3点を追加した。さらに3回裏にもブランコの2点タイムリーなどで3得点。早々に10‐0として試合を決めたのだった。初戦は打線が抑えられた中日だったが、この日は14安打12得点の猛攻を見せ、12‐1で大勝。対戦成績を1勝1敗として名古屋を後にしたのである。

 千葉マリンスタジアムが決戦の場となった第3戦。本拠地に戻ったことでロッテの選手たちが躍動し始める。3回表に荒木雅博に犠飛を許し、中日に1点を先制されたものの、その裏にサブローのタイムリーですかさず追いつき、4回裏には2死満塁のチャンスから清田が走者一掃のタイムリー三塁打を放つなど一挙4得点。これで完全に試合の主導権を握り、さらに7回裏に2点を追加。投げては先発の渡辺俊介が被安打5の無四球1失点完投勝利を収めたのである。これは05年の第2戦に続く日本シリーズ2試合連続2度目の無四球完投勝利であり、日本シリーズで2試合連続の無四球完投勝利は史上初の快挙となったのだった。

 一方、ロッテに2勝1敗と勝ち越しを許した中日は第4戦でセ・リーグ王者の意地を見せる。3回裏に3点の先制を許したものの、4回表に和田のタイムリー二塁打などでまず2点。さらに続く5回表に井端弘和の併殺打の間に三塁ランナーが生還し、同点に追いついたのだ。ここから試合は膠着状態に陥り、3‐3の同点のまま延長戦へと突入。10回裏にロッテは1死満塁のサヨナラの場面を作ったが、福浦和也がサードライナーの併殺に倒れ、チャンスを生かせず。すると中日はその直後の11回表に2死二塁から9番打者の大島洋平がセンターの頭を越すタイムリー三塁打を放ってついに勝ち越しに成功。その裏を守護神・岩瀬仁紀の投入などで0に抑えて対戦成績を2勝2敗の五分へと戻したのである。

 勝ったほうが日本一へ王手をかける第5戦。前日、投手陣が好投した中日は先発に中田賢一を立てたが、これが誤算となった。初回に和田の犠飛で1点を先制したのも束の間。その裏に1死一塁から3番・井口以下に5連続長短打を許し、一挙に4点を奪われてしまったのだ。さらに中田は4回裏にも2失点、5回裏も3失点を喫し、完全に試合が決まってしまった。結局、ロッテは先発全員安打の15安打10得点をマーク。10‐4で圧倒したロッテが3勝2敗とし、日本一まであと1勝と迫ったのである。

 ふたたび名古屋に舞台を移した第6戦。試合は地元で敵チームに胴上げを許したくない中日と一気に決めたいロッテの意地と意地がぶつかった一戦となった。初回に1点ずつを取り合った後、中盤まで両軍ともに0行進が続く投手戦に。その均衡を最初に破ったのは中日だった。6回裏の2死一、二塁からブランコのタイムリー二塁打で勝ち越し。対するロッテも8回表の2死二塁の場面でサブローがタイムリーを放ち、試合は振り出しに。そのまま今シリーズ2度目の延長戦へと突入し、結局延長15回、2‐2の引き分けに終わったのである。試合時間5時間43分というシリーズ史上最長時間試合となったこの一戦、ロッテは11回の勝ち越しチャンスをつぶした一方で、中日は10~14回裏まで5イニング連続で得点圏に走者を進めながら、あと一本が出なかった。そしてこの拙攻の連続が結果的にこのシリーズの勝敗を分けることとなるのである。

 迎えた第7戦。試合は2日連続の死闘となった。3回までに中日が大島の2打席連続タイムリーなどで6‐2とリードしたものの、4回表に1点を返したロッテは続く5回表に今江と里崎智也のタイムリーで3点を取り、同点に。さらに7回表に金泰均のタイムリーでついに勝ち越し。そのまま9回裏を抑えれば日本一という状況を作ったのである。だが、ここから中日が粘る。先頭の和田の三塁打にブランコが犠飛で続き、7‐7の同点としたのだ。そして試合はまたしても延長戦へ。死闘が決着したのは12回だった。中日は9回表から登板していた浅尾がついに力尽き、2死二塁から岡田幸文が日本一をたぐり寄せるタイムリー三塁打を放ってついに勝ち越し。その裏の中日の攻撃を3人で抑えて8‐7という死闘を制したのである。それと同時に、みごとに「プロ野球史上最大の下克上」が完成させたのであった。なお、この年に監督に就任していたロッテの西村監督は史上9人目となる初年度での日本一達成監督ともなった。さらにリーグ優勝なしで日本シリーズを制した初の、そして現在でも唯一の監督となったのである。

(野球ウォッチャー・上杉純也)

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