現在アメリカ全土で反格差デモや暴動が拡大、92年の「ロサンゼルス暴動」を超える大きなうねりを見せている。
6月7日放送の国際ニュース番組「これでわかった!世界のいま」(NHK)では、なぜこのような混乱が発生したのかを説明するショートアニメを流したが、その内容が大きな波紋を呼んでいる。
アニメ内では「黒人と白人の貧富の格差」が原因と断言、白人は黒人の7倍の資産を所有しており、そこにコロナウイルスが直撃、黒人の45%が失業か労働時間を削減されたため「こんな怒りがあちこちで噴き出したんだ」と説明された。 ところが、この動画を見た視聴者から、次々と疑問の声が上がり始め、テニスの大坂なおみ選手もTwitterで「?」というリアクションのGIFをつけて同動画をリツイートしている。
差別問題に詳しいライターは動画を見て次のように語った。
「“貧富の格差”と簡単に片づけているが、そもそもはジョージ・フロイドさんが白人警官に窒息死させられたことがきっかけ。警官による黒人に対する過剰な暴行はレイシズムと深く結びついていることから以前からも問題視されており、以前からくすぶっていたその怒りが勢いを取り戻した、というのが正しいところでしょう。なぜ始まりの事件を説明しないのか、理解ができない」
もちろん、コロナウイルスの影響が皆無かと言えば、それはゼロとは言い切れないが…。
「有色人種への差別は、アメリカでは根深い問題。貧富や仕事の状況はその結果に過ぎないことも説明しないのはどうかと思いますね」(前出・ライター)
さらに同ライターは、動画の細かい部分にもチェックを入れる。
「動画内の説明のセリフが短すぎて、動画の中でしばし無音状態が続くんですよ。言いたいことがそれしかないらしいんですが、その時間があるなら、やはり黒人差別の状況にも触れる時間があったでしょう。それこそ、そう昔のことではない、同様の事件で勃発したロサンゼルス暴動もあるわけですから。簡単にこの問題を説明しようとした番組サイドの姿勢に、大きな疑問を感じますよ」
そのうえ、アニメの黒人男性が筋肉質で怒りっぽく見えるように描かれていることにも差別的との批判が起きていた。動画は、番組の公式Twitterにも掲載されていたが、NHKは6月9日、この動画を削除し、〈掲載にあたっての配慮が欠け、不快な思いをされた方にお詫びいたします〉と謝罪している。
短時間でのわかりやすさを重視するあまりの失態だったのかもしれないが、世界を呆れさせる動画を拡散したのが日本の「公共放送」だったとは、何とも情けない話である。