〈みなさん、私はもうサーシャと一緒に仕事することはありません。私は彼の仕事に感謝し、最高の未来を祈ります〉
自身の世界ランク1位達成に大きく貢献したサーシャ・バインコーチとの関係解消を去る2月12日に突如ツイッターで発表した大坂なおみ。突然のコンビ解消の原因が様々に推測される中、関係解消後、初めてのツアー大会となる2月19日のドバイ選手権で、大坂は第1シード初戦の2回戦、世界ランキング67位と格下のクリスティナ・ムラデノビッチ(フランス)にあっさり敗退したことで、改めて関係解消の理由に注目が集まっている。
当の大坂は、今回の試合直前に、ドバイでサーシャ氏と契約解除に至った経緯を会見でこう説明していた。
「幸福感より成功を優先させることはしない。それが一番の理由」
だが、この抽象的な説明に日本の記者団は首を傾げるばかり。金銭面でのトラブル説は完全否定していたが、いまだ新しいコーチは決まっていない。
「トップクラスのプレーヤーは状況に応じて、新しいコーチを探します。その意味では、大坂も世界のトッププレーヤーの仲間入りを果たしたとみる海外メディアも少なくありませんが…」(専門誌記者)
もちろん、選手とコーチの契約解消は、決して珍しいことではないという。が、サーシャ氏は「WTA年間最優秀コーチ賞受賞(18年)」を昨年末に受賞したばかりだ。WTAは今回の関係解消を受け、2人が仲良しだった18年シーズンのダイジェストVTRを“緊急制作”している状況だという。その影響だろう。ここにきてサーシャ氏に同情的な声も高まっているのだ。それも、日本の側から…。
「サーシャ氏が大坂を励まし、やさしく接するシーンに共感した日本のファンは少なくありません」(スポーツ紙記者)
昨年3月のBNPパリバ・オープンでのこと。サーシャ氏が大坂の前でひざをつき、「君ならやれる、きっと!」と励ますシーンは、日本のスポーツ関係者にも大きな影響を与えた。というのも、ちょうどその直後の日本では部活動の暴力的指導がクローズアップ。日大アメフト部の問題に端を発し、指導者が学生部員を威圧し、精神的にも追い込んでいくやり方が次々と明るみに出た頃だったからだ。そんな中で、
「大坂とサーシャ氏の関係は、まさに理想的でした」(体協詰め記者)
理想の関係があっさり解消されてしまったことに、海外メディアは、「トップアスリートの世界ではよくある話」と、一定の理解を示しているようだが、日本ではそうはいかない。義理、人情の観点からだ。サーシャ氏に同情的な向きも強く、この話の「悪役」は大坂のほうである。
「これからの大坂は、4大タイトル中心のスケジュールで試合をしていくつもり」(前出・専門誌記者)
海外での生活が長くなりそうな大坂には、「ヒール転向の覚悟すら感じられる」(スポーツライター)とか。日本国籍を取得する方向の大坂だが、いろいろな意味で“祖国”とは今後疎遠になる気配もあるのだ。
(スポーツライター・飯山満)