“助っ人外国人”は、日本人にはないパワーを期待されて海を渡る。しかし、そのパワフルな打棒を振るうと、今度は「外国人が『世界の王』の記録を破っていいのか?」と批判を受ける。今回も、大物OBの意見が真っ二つに分かれるなど、「55号問題」が勃発している。熱狂的な“G党有名人”の大激論を以下──。
「王の記録を破られそうだ。おもしろくない。日本の選手に破ってほしかった‥‥」
8月31日、パ・リーグ各球団が伝統のユニホームを着用する「レジェンド・シリーズ2013」の始球式に参加した野村克也氏(78)は報道陣を前に、バレンティンの記録更新について、冒頭のようにボヤき始めた。
その前日には、バレンティンが52号を放っている。野村氏が持つシーズン本塁打記録に肩を並べた直後のことだった。しゃくに障ったわけではないだろうが、ついにはこう言い放った。
「メジャーをお払い箱になった選手に抜かれるのは、日本の恥だ。プライドはないのか!」
野村氏のように「日本の恥」とばかりに怒る人は少数かもしれない。とはいえ、腰かけの外国人選手に「世界の王」が負ける──。この事実を受け入れたくないという感情は理解できる。
こうした感情が、これまで記録更新に挑んだバースやローズ、カブレラといった外国人選手への不必要な敬遠という形で現れたことは言うまでもない。王貞治氏のシーズン55本という本塁打記録は「聖域」と呼ばれている。それは前人未到の記録という以上に、外国人選手にとってのタブーという意味合いが強い。
ところが、野村氏とは正反対の意見を持つ大物OBもいる。張本勲氏(73)だ。
「バレンティンは新記録を達成するでしょう。ピッチャーには正々堂々と勝負してほしい」
9月1日に放送された「サンデーモーニング」(TBS系)に出演し、張本氏はこうコメントしたのだ。
かつて、自身の最多安打記録(3085本)をイチローが日米通算で抜いた際には、張本氏は「試合数が違う」と認めようとはしなかった。そのイチローを例に出して、張本氏はこう話したのだ。
「バースやカブレラの時は四球で逃げた。でも、イチローはアメリカで正々堂々と勝負してもらっている。(バレンティンに対して四球で逃げるのは)失礼ですよ!」
張本氏と王氏は同期であり、お互い信頼し合う仲である。張本氏の言葉にこそ、王氏の真意が込められているのか。