どこか素直に喜べない。大震災から2年半が経過したタイミングでの東京五輪決定。お祭りムードの中、首をひねりたくなる情報が漏れまくる東京と、報じられているよりずっと複雑で深刻な問題が噴出し続ける被災地──。双方が今、直面している「相容れない現実」を徹底取材した!
東京五輪開催決定に、日本列島が沸く一方で、招致のためなら何でもありと言わんばかりについていた“ウソ”が、続々と明るみに出ている。一向に解決されない汚染水問題、福島原発の近隣地へのキャンプ招致‥‥。これはもはや笑って許せる範囲をはるかに越えているのではないか。
「安倍総理のスピーチには2つのウソがありました。IOC委員にばかりいい顔をして、傷つくのはいつも被災者です」
こう話すのは、ジャーナリストの横田一氏。彼が言うスピーチとは、9月7日のIOC総会での安倍晋三総理(58)による最終プレゼン。安倍総理は福島第一原発の汚染水問題について、
「私が安全を保証します。状況は完全にコントロールされている」
「福島第一原発の港湾内0.3キロ圏内に完全にブロックされています」
と高らかに宣言した。が、そこに1つ目の“ウソ”があると横田氏が続ける。
「放射性物質は、原発港湾外側の、外洋からわずか150メートルの距離の“外洋と直接つながっている”排水溝から検出されている。完全にブロックどころか、ダダ漏れしている状態ですよ」
それでも国際社会の場で掲げた“公約”だけに、安倍総理としてはこうした声に耳を塞いでおきたかったはず。しかし、程なくして足並みをそろえるはずの東電の「裏切り」にあう。9月13日の民主党の福島第一原発対策本部の会合で、民主党の増子輝彦副代表に汚染水問題を追及された東電の山下和彦フェローが、
「申し訳ありません。今の状態はコントロールできていないと考えております」
と、汚染水の制御不能を認めてしまったのだ。政治部記者が言う。
「安倍総理のスピーチを、東電側が真っ向から否定したことで現場は騒然となりました。慌てた菅義偉官房長官は、直後の会見で『放射性物質の影響は発電所の港湾内にとどまっている』と強調。官邸からきつい“お叱り”を受けた東京電力は、同日中にホームページで、〈当社としても同じ認識〉と釈明しました。技術畑出身の山下フェローは温厚な人柄で、会見では政治的にごまかせない実直なタイプ。で、思わず本音を口走ったんでしょう。発言の責任を取る形での更迭も噂されています」
しかも、前出の横田氏は安倍プレゼンには“さらなるウソ”があると指摘する。それは、
「数値は最大でも世界保健機構(WHO)の水質ガイドラインの500分の1。日本の食品や水の安全基準は世界で最も厳しい基準だ」
との安倍総理の説明についてだ。横田氏が言う。
「WHOの水質ガイドラインとは、『飲料水の水質基準』を表すもの。汚染水を淡水化(海水を処理して真水を作る)して大量に飲む人などいないのに、飲料水の基準で安全宣言するのは世界にウソをついていることに等しい。問題なのは放射性物質が人が口にする魚介類に与える影響です。世界に安全をアピールするなら、安倍総理は福島の魚を7年間食べ続けてほしい」
事実、福島県相馬市の相馬双葉漁業協同組合は、度重なる汚染水の流出で安全確認ができないため、9月末頃まで漁の試験操業の中断を余儀なくされ、今も東電に振り回されているのだ。
◆アサヒ芸能9/24発売(10/3号)より