「梅毒」が急増している。年代別に見ると、男性は40代から60歳以上まで多数いるので、まったく他人事とは言えない。
国立感染症研究所のデータによると、1940年代に20万人超の患者数が報告されていたが、ペニシリンの普及により、03年には500人程度にまで減少。しかし、11年から増加に転じ、17年には年間報告数が5000人を超えている。増加原因は、出会い系アプリや外国人観光客との接触が挙げられるが、根拠はなく実際の原因は明らかになっていない。
梅毒は「梅毒トレポネーマ」という病原体による感染症。口や性器などの粘膜から感染し、性的接触が主な感染経路となっている。
感染すると、1~3カ月ほどで感染部位にしこりを感じるようになる。しかし、この段階では痛みはなく、自然に症状はなくなってしまうため、自覚症状がないまま他人にうつしてしまうケースが多い。
進行すると、手のひらや足の裏、体全体などにうっすらと赤い斑点が出ることがあるが、アレルギーや風疹、麻疹などと間違えられやすい。全身炎症の影響で、発熱や関節痛、全身の倦怠感も感じるが、風邪症状とも近いだけに、なかなか気づかないのが現状なのだ。
感染から3年ほど経過すると、ゴムのような弾力のあるできものが皮膚や筋肉、骨などにでき、さらに進むと血管や神経まで侵され、最悪の場合は死に至ることもある。
それを回避するためにも初期段階で気づくことが重要だ。扁平に隆起したイボ「扁平コンジローマ」があり、性的接触など身に覚えのある場合には、医療機関で検査を受けたほうがいい。
予防策としては、性行為には必ずコンドームを使うこと。多数と性的関係を持たず、パートナーは一人に限定することも重要だ。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。