「ヘルパンギーナ」の感染者が、過去10年間で最も多くなったことが、国立感染症研究所の発表により明らかになった。これは、「エンテロウイルス」というウイルスが原因で発症。すでに18の都府県で警報レベルの感染者が出ていて、この先も流行が続くと予想されている。
毎年5月頃から患者数が増加して7月にピークを迎える夏風邪の一種だ。
一般的に「ヘルパンギーナ」は子供がかかりやすいというイメージが強いが、実は大人でも感染する場合がある。大人の場合には、重症化の恐れがあるため、〝子供がかかる病気だから〟と侮ってはいけない。
この病気は、39〜40度の高熱や喉の痛み、口内の水疱などを発症するのが特徴だ。1週間ほどで治ることが多いが、重症化してしまった場合は、脳炎や髄膜炎、心筋炎などを発症する可能性もある。
残念ながら「ヘルパンギーナ」には、ウイルスの増殖を止めるような〝特効薬〟はない。そのため病院でも、対症療法としての薬しか処方されない。熱や、喉の痛みを薬で和らげながら栄養を摂るのが治療の基本だ。脱水状態になるなど、よほど症状がひどくない限りは自宅療養をすることがほとんど。そこで家庭内でも可能な症状の緩和策は次の2つである。
1つ目は、「塩味や酸味、辛味が強い刺激物を避ける」こと。口内にできた水疱によって、刺激物は喉への負担を増加させてしまう原因となってしまうからだ。
2つ目は、「下痢止め薬を服用しない」こと。ヘルパンギーナはウイルスによる感染症のため、下痢を止めてしまうとウイルスを排出することができなくなってしまうからだ。
大人は、重症化するリスクが高いため、手洗い・うがい、消毒など、日頃の予防を徹底しよう。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。