元広島カープのエース・北別府学氏が「敗血症」と診断され療養中だ。元プロレスラーの鶴見五郎氏(22年死去)、作曲家のすぎやまこういち氏(21年死去)や、韓流スターのペ・ヨンジュンもかつてこの病気を患っていた。
「敗血症」は、何らかの細菌やウイルスに感染することによって、全身に炎症が広がり、心臓や肺などの臓器に重篤な障害が起きる状態を指す。原因となる主な細菌は、ブドウ球菌、大腸菌、連鎖球菌などであり、多くは肺炎、尿路感染症、皮膚や腸管の感染症などから発生する。特に65歳以上での罹患率が高いことから、「高齢者の疾患」とも言われている。
初期症状は、悪寒、38度以上の発熱、下痢や嘔吐、頭痛、咳などが見られる。進行すると、心拍数の上昇や呼吸数の増加、血圧低下、意識低下などが生じ、さらに悪化すると、呼吸不全、腎不全、肝不全などの多臓器障害症候群を併発する危険もある。
特に重篤な症状が「敗血症性ショック」だ。発症すると、全身のさまざまな臓器の機能が低下して、生命を脅かす低血圧を生じてしまう。早急に適切な治療を行わなければ命を落とすケースも少なくない。
初期症状などから敗血症が疑われたら総合病院の感染症内科や救急科で細菌検査、血液検査、胸部エックス線や全身CTなどの画像検査を行い診断される。治療としては、原因となっている感染症の原因療法が行われる。細菌の場合は抗菌薬、ウイルスの場合は抗ウイルス薬など速やかに病原体に適した薬を投与することが大切だ。また、血圧維持のためには十分な輸液はもちろん、血管収縮薬の投与も有効とされている。
予防法は感染症にかからないことが最も重要だ。日頃からの手洗いや手指消毒、マスク着用などの基本的な感染対策をしっかり行いたい。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。