長引く咳が止まらない「百日咳」が全国的に流行しているという。
「百日咳」は、呼吸器の感染症で、短い咳が連続し、息をする時に「ヒューヒュー」という音がする咳が特徴だ。百日咳菌という細菌が、飛沫感染や接触感染により気道に感染し、10日前後の潜伏期間を経て発症する。初めの風邪症状から、次第に咳の回数が増え、咳の発作が激しくなる。
百日咳といえば、幼い子供がかかるイメージが強いが、問題になっているのは成人後の発症だ。重症化するケースは少ないが、軽症のため百日咳と気がつかないまま感染を周囲に広げてしまう危険があるのだ。
百日咳予防には、日本ではワクチン接種が生後3カ月から行われている。しかし、ワクチンの予防効果は時間の経過とともに弱まっていくことがわかり、ワクチン効果の弱まった成人の患者の数が増加傾向にあるという。
アメリカのワシントン州では、2012年4月に百日咳の流行が宣言された。感染者の分析から、接種から2年以上経過した百日咳のワクチンの効果は、低下してしまうことが判明している。
さらに、国立感染症研究所の報告によると、4回目の接種完了から4年が経過した5歳児の抗体保有率は、20%台まで低下してしまう。近年の日本での流行も、ワクチン効果の弱まりが原因なのではないかと懸念されているほどで、日本小児科学会は、就学前の1年間と11歳~12歳での2度の追加接種(任意)を呼びかけている。
大人もすぐにワクチン接種を行ったほうがいいのか? 世界の主要国では一般に使用されているが、日本国内では未承認のため、輸入ワクチンを任意で接種することになる。
特に小さな子を持つ家庭では、検討してみてもいいのかもしれない。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。