舌や口の中に口内炎のような炎症ができて食べる時にしみて痛い‥‥。もしかしたら「ヘルパンギーナ」かもしれない。
「ヘルパンギーナ」は5月から7月頃にかけて流行する「夏風邪」の一種の感染症だ。潜伏期間は3~6日で、38~40度の高熱が出て、喉も赤く腫れて舌や口の中に1~2ミリの小さな水泡を発症する。発熱や喉の痛みは、たいてい2、3日で治まる。
主な感染経路は、くしゃみなどによる「飛沫感染」、ウイルスの付着した手が触れる「接触感染」、排泄物の中に含まれるウイルスが口に入る「糞口感染」だ。ウイルスの入った食べ物を口にすることにより、腸内で感染する「経口感染」もある。
一般的にこの病気は子供がかかる夏風邪と思っている人が多いが、注意が必要なのは、大人が感染すると高熱・水泡などの症状が子供より長引き、重症化する傾向がある点だ。ごく稀なケースではあるが、脳の炎症、髄膜炎、心筋炎といった重い病気につながる危険もある。
実は、ヘルパンギーナの人への感染力はそう強くはない。だからこそ、抵抗力が低い子供を中心に感染するのだが、大人でも何らかの理由で抵抗力が下がっていると、ヘルパンギーナを発症してしまう。特に連日の猛暑で抵抗力が下がっている人も多いので侮ってはいけないのだ。
残念ながらこのウイルスには特効薬はない。治療は解熱剤で熱を下げて症状を軽減したり、口内炎は鎮痛剤で痛みを和らげるなどの対症療法となる。
特に喉の痛みが強く、口内炎にしみて痛いため、食事や飲みものを摂取しづらくなり、「脱水症状」を起こす可能性もあるので水分補給は忘れずにしたい。食事も喉に刺激が少ないおかゆや、柔らかくゆでたうどんや雑炊など、食事の工夫も必要だ。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。