各局の秋ドラマのラインナップが出そろった。“大本命”が不在の中、視聴率も混戦が予想されるのだ。
秋ドラマでも“大本命”と言われているのが堺雅人(39)主演の「リーガルハイ」だ。「半沢直樹」の40%超えの勢いそのままに、前シリーズの10%台前半の平均視聴率を大きく上回ると、放送評論家の松尾羊一氏も太鼓判を押す。
「大本命はやっぱり『リーガルハイ』。前作も視聴率はけっこう高かった。堺雅人は『半沢直樹』でガゼン(人気が)出ちゃいましたね。その余韻が続いて、視聴率20%は取っていくと思います。今度は半沢票が上乗せされますからね」
一方、上智大学教授の碓井広義氏(メディア論)は「半沢」ほどの社会現象にはならないと見ている。
「もちろん『半沢直樹』の堺雅人さんであり、それから『リーガルハイ』の最初のシリーズが評価されていたというのもわかるんですが、よくも悪くもクセのあるドラマです。前作の半沢直樹というキャラクターには幅広い人が共感を持てたのですが、『リーガルハイ』の弁護士さんは相当な変わり者ですから、好きになる人は相当好きになるし、ちょっとこのキャラクター嫌だなって思う人はこのドラマにあまりついていかない。もちろん十数%は取るぐらいヒットはしますよ」
むしろ、碓井氏のイチオシは、米倉涼子(38)の当たり役である「ドクターX」シリーズをあげる。
「米倉涼子さんのスーパー外科医は単純に手術がうまいだけではなくて、『私、失敗しないので!』という決めゼリフがあるほどの自信家。同時に秘密を抱えていてどこか影があります。視聴者も単純明快なヒロインではなく、謎の部分を持っているヒロインの第2シリーズというところに期待感を持つと思います」
また、秋ドラマではさほど下馬評が高くない作品の中にもキラリと光るドラマがあるという。松尾氏はTOKIOの長瀬智也(34)主演の硬派ドラマに注目する。
「大化けしそうなのが『クロコーチ』ですよね。3億円事件がバックにあるわけですよ。それに長瀬智也がドスを引きずっている役なんですよね。相手役が剛力彩芽(21)ですからね。けっこうこのコンビはおもしろくなる要素を持ってますね」
対する碓井氏は、竹内結子(33)が労働Gメンとして奮闘する「ダンダリン」に“半沢的”なヒットにつながるポテンシャルを感じるという。
「恐らく、連続ドラマでありながら、毎回1社ずつ叩き潰していくというか、押さえ込んで決着をつけていく展開じゃないかと思います。『半沢直樹』では連続的な大きなストーリーを持ちつつも、毎回必ず『水戸黄門』の印籠のような、『倍返しだ』とスカッとする決着をつけて終わっていました。そんな“現代の時代劇”という『半沢直樹』のヒット要因を移植したものが『ダンダリン』ですね」
だが、松尾氏、碓井氏ともに木村拓哉主演の「安堂ロイド」には首をかしげるばかり。
「もともとTBSは『半沢直樹』なんてまったく期待しておらず、『安堂ロイド』までのつなぎぐらいにしか思ってなかったはずです。でも、そんな甘いもんじゃない。今どき、100年先の未来からやって来たロボットの話を我々がなぜ見なくちゃいけないのかっていうことですよね。もちろん、キムタクファンの皆さんが見るのはご自由ですけれども、大人の男が見るほどのものではないでしょう」(碓井氏)
松尾氏は、長澤まさみ(26)主演の「都市伝説の女」に苦言を呈する。
「都市伝説的な題材っていうのは、低調気味なんだよね。特定のタレントファンを捕まえることができても、ドラマとして伸びシロがない。ましてや長澤まさみは、同世代の綾瀬はるか(28)に比べると女優としてかなり抜かれてしまった。いいライバルだったんだけども差は歴然ですね」
第2の「半沢」や「あまちゃん」のような大人の鑑賞に耐えうる意欲作の登場に期待したいものだが‥‥。