世界のホームラン王、王貞治氏(現・ソフトバンク球団会長)が打った本塁打の数は通算868本。これは、今も破られぬ世界記録だ。国内では第2位の故・野村克也氏の657本に200本も上回り、王氏が世界新記録を樹立した1977年当時の世界記録保持者、ハンク・アーロンの755本にも結果的に100本以上の大差をつけている。そんな77年の9月3日、対ヤクルトスワローズ戦において後1本に迫った新記録達成の瞬間を王氏が懐かしく振り返る番組があった。
巨人で活躍した元プロ野球選手、ウォーレン・クロマティ氏のYouTubeチャンネル〈クロマティチャンネル〉、11月20日に投稿された〈【神回】夢の対談がまさか実現するとは!!世界の王貞治がクロマティチャンネルに登場!!(前編)【クロマティも超緊張】〉がそれだ。
対戦投手は「鈴木康二朗」だったと、王氏の記録は鮮明だ。第1打席は3ボール2ストライクからフォアボール、第2打席も3ボール2ストライクと同様の展開となり、スタンドのすさまじい湧き方からも、ピッチャーの鈴木氏はストライクを投げなければいけない状況に追い込まれていたと王氏は振り返り、結果、鈴木氏の放ったド真ん中をみごとホームランにしている。
鈴木氏の追い込まれた状況に、「かわいそうだったと思いますよ。同情しますよね」とも述べている王氏、心は冷静であり、それゆえに樹立した記録であったことがよくわかった。
ド真ん中に投げた鈴木氏、その球をホームランに打ち返した自身、いずれも「素晴らしかった」と振り返る王氏の表情には嫌味や驕りはみじんもなく、“神”がかった優しさが浮かんでいた。世界で1人しか見せることのできない、ホームランキングの笑顔だった。
(ユーチューブライター・所ひで)