五輪決定時期の輸入禁止措置問題は、民意を指導できない韓国政府の状況を象徴しているという。黒田氏が語る。
「東京での五輪開催に韓国が横やりを入れたというのは誤解です。9月19日は韓国の中秋節で先祖の墓に参ったり、親族に贈り物をするのです。今年は5連休で、この時期は高級魚を中心とした需要期なのです。その前に福島の一件で国内の魚の消費が激減していて、業者・消費者含めて政府は何をしているんだ、という世論的圧力がありました」
日本産食品の放射能問題では、韓国政府も安全を繰り返しアナウンスしていた。しかし、国民の大方はこれを信用しなかった。
「世論をなだめるために、しかたがなく輸入禁止としました。韓国では北海道産のタラの需要がとても多いのですが、今回は北海道産を除外しています。輸入禁止措置は激しいように見えて実はユルいのです」(前出・黒田氏)
何より、韓国人の多くは「反日」をうたいながらも、日本食品に関しては絶対の信頼を持っているという。
「日本の食品基準が厳しく、日本の食品は絶対安全だと、多くの一般市民は確信しています。今、韓国では日本のチェーン料理店が、特に若い世代の女性に人気です。その理由は、こうした日本の店が清潔だからなのです」(前出・黒田氏)
考えられることは、彼らも自国の汚染食品や、不衛生な環境を改善しようと躍起になっていること。また、日本に憧れを持ち、大きな目標としていることだと言えよう。韓国の基準が日本に追いつくまでには、まだ時間がかかりそうだが、当面の問題として汚染食品などを水際で止めることはできるのか。垣田氏は指摘する。
「各都道府県では、スーパーなどで実際に売られている韓国食品を検査していますが、やはり違反が見つかっていますので防ぎきれてはいません」
実際の流通の現場を抜き打ちで検査しているので、何らかの基準を超えた食品はすでに摂取されてしまっているのが現状だ。
「もし国産の食品で違反が出ると、その県のモノは当分売れなくなります。以前、栃木のイチゴで農薬の基準値をオーバーしたら、栃木のイチゴが1カ月くらい売れなくなりました。当事者だけでなく、周りにも迷惑をかけるので、すごく慎重にやっているのです。結局、国産品を消費するのが一番の防衛策です」(垣田氏)
やはり、目先の安さに捉われないことが賢明なようである。