メガバンク・みずほ銀行による暴力団員への融資問題は底なしの様相だ。当初、巨大組織の「一部で起きた事故」のように説明していたのが、しだいに問題を承知していた幹部の数は増え、ついには頭取も問題を知っていたことを認める始末。もはや黙認が横行しているとしか思えぬ両者の関係はどれほど深いのか。森功氏が「深層」をえぐる!
問題融資の騒動は9月27日の夕刻、突如沸き起こった。
「みずほ銀行に業務改善命令を発令するので記者レク(説明)を行う」
午後になって、金融庁の日銀記者クラブにそう伝えられ、新聞テレビ各社の担当記者が騒然となった。
そこから記者たちはみずほの関係者はもちろん、他行の広報担当者も駆けずり回り、取材を始めた。情報のない中、
「どうやら、みずほがヤクザとの自動車ローンの取引を隠してきたらしい」
という話が広まっていった。
金融庁の発表によれば、みずほ銀行は反社会的勢力との間で多数の取引があることを知りながら、2年以上も放置していた、という。内部管理および法令順守体制に重大な問題が認められたため、銀行法に基づき業務改善命令を発令し、10月28日までに業務改善計画を提出するよう求めたのである。
問題の融資は、系列の信販会社「オリエントコーポレーション」(オリコ)が審査と保証をし、みずほ銀行が顧客に自動車購入資金を貸し付ける提携ローンだ。反社相手に230件、総額約2億円の取引を繰り返してきたという。
業務改善命令を受けたみずほは「厳粛に受け止め、関係者にご迷惑をおかけし心からお詫びします」とコメントを発表したものの、その後、正式な説明もない。突然の金融庁による行政処分発表以来、メディアはみずほに対して記者会見を求めてきたが、初めて説明したのが、処分2日後の29日夕方。それも佐藤康博みずほフィナンシャルグループ社長兼みずほ銀行頭取による行内のぶら下がり会見のような簡単な謝罪のみだ。
なぜ取引が始まったのか、といった事情説明はいっさいない。さらにその後、メディアに対してみずほ広報が少しずつ説明を加えていったが、これがまたお粗末だった。約3年前の2010年12月からコンプライアンス担当の執行役が知っていたとしていた当初の説明から、承知していたのは常務執行役までとなり、1週間後にはそれが副頭取へ。さらに10日経つと当時の頭取まで把握していた、とコロコロ変遷する始末だ。あまりの対応のひどさに、怒る気も抜けてしまう。
ヤクザとの銀行の取引に対する最近の銀行処分といえば、旧三和銀行(現三菱東京UFJ銀行)淡路支店の取引が思い浮かぶ。山口組関係者に対する迂回融資など、最終的に80億円が焦げ付いた。金融庁は2007年2月、全国の三和の支店法人営業部門において新規融資を7日間停止する厳しい処分を下した。
◆プロフィール 森 功(もり・いさお) 1961年福岡県生まれ。「週刊新潮」編集部などを経てノンフィクションライターに。「ヤメ検」(新潮文庫)、「許永中」(講談社+α文庫)、「腐った翼」(幻冬舎)など著書多数
◆10/15発売(10/24号)より