テリー もう今日は、ほんとに日本の歴史を聞いてるみたいですけど(笑)。メイコさんは三島由紀夫さんともお付き合いがあったんですよね。
中村 三島さんはね、ものすごく気さくで、やっぱりちょっと壊れてましたね。だから、ああいう亡くなり方ができたんですよね。
テリー 壊れてたというのは、偏ってたってこと?
中村 あのね、すぐカッとなるんですよ。亡くなった作家の山口洋子さんが経営していた「姫」(銀座のクラブ)なんかが、私たちのたまり場だったんですけど、そこでも三島さんはよくキレてて、「三島さん、今日は何? どういうテーマで怒ってるの?」とか、私たちよく言ってました。
テリー 誰にキレるんですか。お客さん?
中村 そこはめったなお客は入れませんからね。だから、例えばケンカしそうな人っていうと野坂昭如さんとか。あのへんの方と何か話してるうちに気に障ることがあったんでしょうね。
テリー 議論が白熱したんですかね。確か三島さんの自決の前にも会ってるんでしたっけ。
中村 そう、3日前ぐらいですよ。娘のカンナが詩の本を出すので、三島さんに見ていただきたいって、カンナとの対談があって。その頃、カンナはまだ小学生ですから、私がついていったんです。
テリー 付き添いでね。
中村 そしたら、今でも印象に残ってるのは、カンナの詩に「噴水さん、噴水さん、そんなにいつもいつも飛び上がって、お空に向かってくたびれないの。私が神様だったら、お空から吊革下げてあげるよ」っていう詩があったんですね。それに三島さんがいたく感動して、「カンナちゃん、これはいい詩だと思うよ。おじさんもね、つくづく吊革がほしいと思うよ」っておっしゃったんですよ。
テリー またカンナさんも小さいのに文才がすごいね。
中村 私、それを隣の部屋で聞いてたんですけど、何だか胸がいっぱいになってしまって。それで「三島さん、何か悩んでるのかな、しんどいのかな」と思ったら、すぐあの事件ですから。
テリー ショックですよね。
中村 信じられなかったです。また最期が壮絶でしたからね。
テリー そうですよねぇ。でも、メイコさんのお話を聞いてると、ほんとにお酒を飲むのがお好きですよね。やっぱり銀座が多かったんですか。
中村 そうですね。あの頃の銀座はほんとに素敵でしたから。たまに生のオケ(演奏)を聞きたくて、横浜の「クリフサイド」に行ったりもしましたけど。
テリー クリフサイドっていうのは、(石原)裕次郎さんとか、日活の映画スターがよく行ってたナイトクラブですよね。
中村 でも、普段は男の子みたいに毎日銀座で飲み歩いて。大晦日にはお財布に入りきらないから、お札の束をハンドバッグに入れて、行ったりしてました。
テリー え、なんで? 財布に入る分だけでいいじゃないですか。
中村 あの頃はクレジットカードなんかありませんから、それまでツケで飲んだ分をまとめて払うんですよ。
テリー あぁ、そういうことか。そうすると数百万ですね。
中村 はい。
テリー いいなぁ、夢のような時代だ。
中村 ねぇ。あの頃が最高じゃないですか。
テリー いや、今日は貴重なお話をたくさん伺いましたけど、やっぱり時間が短すぎるな。メイコさん、この状況が落ち着いたら、食事に行きましょうよ。
中村 あら、うれしい。私、人混みが好きなのに、最近は外に出られないからほんとにつまらないんですよ。テリーさん、ぜひお願いしますね。
◆テリーからひと言
メイコさんと話してるとすごい人の名前が次々出てきて、ほんとに楽しいんだよなぁ。今度食事に行った時は、表に出せない話も聞かせてください。