テリー 長い芸能生活の中で仲の良かったひとりが、美空ひばりさんですよね。
中村 そうですね。最初に会ったのは、彼女が出ている劇場を訪問しておしゃべりするっていう雑誌の企画で。私が17か18で、彼女は3つ下だから14か15の時ですね。でも、もう会ったとたんにすごい貫禄。私が「私たちだって普通の女の子みたいにボーイフレンドと堂々と腕を組んで銀座を歩きたいわよね」って言ったら、「私はそうは思いません」って。
テリー へぇ、どうして?
中村 「メイコちゃん、私たちはね、夢を売る商売だから、フアンの人たちがされたくないと思うことはやめなくちゃ」って。
テリー 14か15ですごいプロ意識ですね。
中村 そう、私ビックリしちゃって。
テリー その年で、もう一家の大黒柱として家族を支えていくんだみたいな意識も、あったんでしょうね。
中村 そうですね。それで少女時代はお互いものすごく忙しくて、ほとんど会えないでいたんですけど、私が結婚してもう(娘の)カンナとはづきがいた頃ですね。ひばりさんのママから「どうしてもお宅にお邪魔して、メイコちゃんと話がしたい」って連絡があったんですよ。私、「何だろう。クレームつけられるようなこと言ったのかな」と思ったんです。もう何年も会ってなかったもんですから。
テリー 何だろうって思いますよね。
中村 そしたらママが来て、「ひばりも離婚したり、いろいろあって、これからは社会性を帯びた美空ひばりにならなきゃいけない」と。「メイコちゃんは大して年も違わないのに作曲家の奥さんで、2人のお嬢ちゃんがいて。ひばりにそういうあなたを見せたいから仲良くしてやってね」って言うんですよ。
テリー 手本になってあげて、みたいなこと?
中村 そうなんでしょうね。そしたら、そこへひばりさんが来て「今日泊まっていく」って言うから、えぇーって。
テリー え、急に? ひばりさんが泊まるって、相当大変ですよね。
中村 でしょう。神津(善行)さんなんて困っちゃって「どうしよう、どうしよう」って。それで、その時はダブルベッドしかなくて、他に空いてる部屋もなかったから、結局、3人で川の字で寝ることになって。神津さんは「一睡もできなかった」って言ってました。
テリー 横で美空ひばりが寝てたらね(笑)。
中村 それで、それからしょっちゅう泊まりに来るようになったんですよ。
テリー どんな話をしたんですか。
中村 あの人、惚れっぽいから、その都度、好きな人が変わるので、恋人の話がいちばん多かったですね。
テリー そうすると、小林旭さんの話なんかも?
中村 聞きましたし、旭さんと別れたあともボーイフレンドがいないとつまんない、生きていけないっていう人だったから、恋愛はたくさんしてましたね。
テリー なんで再婚しなかったんでしょうね。
中村 なんででしょうね。やっぱり男性のほうが引いちゃうんじゃないですか。なかなか「美空ひばりと結婚します」とは言えないんでしょうね。
テリー そうか。まぁ、ひばりさんを受け止める力のある男っていうのはなかなかね。でも、僕も何度もお会いしましたけど、すごくいい人ですよね。
中村 そうですね。すごく心があったかくて。あんなにいい人はいないですね。