岩館氏が続ける。
「今の冷凍技術は上がっていて、生とわからないくらいまで解凍できます。しかし、消費者はその技術には感動しないのです。ブランドというのはあるクオリティの証明になりますが、独り歩きするとブランドが強くなりすぎて、肝心の品質は二の次になることがあります。実は、ここに偽装の生まれる下地があると言えるでしょう」
逆説的に偽装を生み出す「ブランド食材」だが、流通販路の急速な整備で、現在、これらは乱立している状況である。
「ネット販売の拡大によって、地方にしかないおいしいものの情報を発信することができるとともに、実際に入手できる流通手段も整いました。直接、消費者に売れればより利益も多くなり、また、売れることでブランド化が強まるという構造があります。ブランド化された食材は高級品として位置づけられ、より利益を生みます。ブランドや産地を偽装するだけで大きな利益を生む構図で、ここに産地偽装の根本問題が潜んでいると思います」(前出・岩館氏)
これからクリスマスや正月がやって来る。節目のイベント用のオードブルや、おせちをネット購入することも当たり前の時代になった。垣田氏は阪急阪神ホテルズの一件が、消費に与える影響をこう解説する。
「おせち料理のトラブルは毎年のように出ています。おせちには高いお金を出す人も多く、企業側はいちばん儲かるのです。届いてくるものは開けるまでわからないし、食べてみてもわからない食材もあります。消費者が騙されることが、今回の件であらためて認識されました。誠実な業者は大迷惑です」
それでは、消費者である私たちはどのような防衛をするべきなのか──「阪急阪神」の件では「フレッシュ」と書かれたジュースが加工品であったことが露呈した。
「目の前でしぼってもらえばいいのです。スーパーなどでは鮮魚を解体する時に、お客さんの目の前でさばくようになっており、調理の場面を可視化することで、ある程度、偽装できないようになります」(前出・垣田氏)
しかし、小薮氏はこう解説するのだ。
「外で飯を食うことをしないか、添加物を受け入れるかの選択の問題です。加工食品には添加物などが表記されていますが、これが外食となると、多くの場合、原材料・添加物は不透明になります。外食することは、そのリスクを背負うことを前提にしなければいけません」
前出・岩館氏は、消費者の感性が重要だと主張する。
「食品の品質チェックをするなら、食品そのものの匂いや味わいから傷んでいないかを五感で判断するべきです。現在では賞味期限を過ぎると捨てるのが一般になっていますが、それは期限という数字にしか頼っていないからです。大切なのはブランドではなく、みずからの感覚でまず判断すること。自分の五感を研ぎ澄ますことが大切なのです」“ブラック厨房”で作られた料理で「黒★3つ」などいただきたくないものである。